
こんにちは。「将来は世界をまたにかけて働きたい!!」、「海外で働く商社マンになりたい!」、「日本が世界に誇れる工作機械業界で海外で活躍したい!」と考えている就職活動生の方も多いのではないでしょうか。
世界をまたにかける商社マンといえば、総合商社をイメージされる方も多いと思いますが、工作機械業界でも海外で活躍する場は広いです。今回は工作機械専門商社・工作機械メーカーでは実際に海外で働けるの?といった疑問に対して簡単に解説します。

就職活動生を対象にしており、「海外で働きたいけど機械専門商社(工作機械メーカー)でいいの?」と思ってる方は参考にしてください。
また工作機械メーカーの駐在経験者数名に聞いた話ではありますが、工作機械メーカーの「海外で働く」ことと比較しながら紹介したいと思います。
結論から言うと、よくイメージされる”海外で働く”ということは、工作機械メーカーの方が合っているのではないかと思います。
就活時に考える海外で働くイメージ
就職活動時代に思い浮かべる「海外で働く」とはどのようなイメージでしょうか?
世界をまたにかけて、異文化の人々とコミュニケーションをとり、政府や財閥などと取引を行い大規模プロジェクトを取り仕切っている姿をイメージされるかもしれません。
もちろんこれらのイメージも当てはまります。工作機械はマザーマシンと呼ばれているだけあり、その国の工業の基盤を支えるものなので、海外の大企業や時には政府が関わることもあります。

私も学生時代にそのようなイメージをして活躍している自分を夢見ていました…
しかしそのような仕事はごく一部であることも事実です。
学生時代によく思い描く"海外で働く"イメージ(予想) ・異国の地でリーダーとなり、トラブルにも対応して大規模プロジェクトを動かしている。 ・現地のローカル企業・政府と取引を行い、輸出入を行い日本のものづくりの世界展開に貢献している。 ・語学も身につき現地の人々を取りまとめて仕事をしている。 ・駐在員の大豪邸に住んで、海外ライフを満喫している。

機械商社・メーカーの海外での役割
ではイメージとのギャップや実際の仕事内容を紹介する前に、機械商社・機械メーカーの海外での役割を解説します。
機械商社の海外での役割
①日系企業の海外工場の生産設備のサポート
主にこの仕事がメインになります。海外拠点がある商社では、日本でもお客さまである日系製造業の海外工場の生産設備のサポートをします。例えば、設備が故障した際の修理や、部品製作、メンテナンスや点検のサポート、現地での設備導入のサポートを行います。
日系の製造業は人件費やサプライチェーンの分散化、地産地消(その国・地域で消費するものはその国・地域で生産する)の観点から海外、特に中国や東南アジア、南アジア、北米に進出しています。しかし従業員や環境、文化、部品の調達具合、インフラなどどうしても日本と違う部分も多く、同じようには生産ができません。生産設備も日系メーカーの設備を海外工場に導入した場合は、故障した場合に機械メーカーもすぐ対応できない時もあります。そのような勝手が悪い海外での生産をサポートすることが機械商社の役割となります。

そのために機械商社では海外拠点に現地のサービスマンを雇っていることが多いです。機械の故障など緊急時の対応や、現地での生産ライン立ち上げ作業のサポートを行います。このような体制を海外でとっていると海外拠点のないメーカーの設備を導入する時や、もしもの時に安心できるため、お客さんからはありがたがられます。
さらにはロボットシステムや組立機などラインの設備間に入れるような装置を製作できる自社のエンジニアリング部隊を持っている企業も多いです。
②現地企業へ日系設備の販売
学生時代に一番イメージする「日本の高精度なモノを海外へ展開する」ことを行います。実際は機械メーカーも現地企業の代理店を持っている場合も多く、ローカル企業との取引は日系と比較して少ないのが現実です。大手の機械メーカーではなく、ニッチな技術だがまだ海外で広まっていないメーカーなどの現地での販売権を所有することが必要になります。在庫の所有やサービス対応を担うスタッフを配置することなどで販売権を獲得することができます。
大手機械商社では、海外で展示場や機械本体や部品の在庫、サービス部門を持ち、特定の機械メーカーの販売権を独占契約しています。そうすることで現地企業からメーカーに問合せがいった場合でも、メーカーから情報をもらって対応、販売するため、現地企業と英語や現地言語でのやりとり、サポートを行います。現地の営業マンやサービスマンを取りまとめて管理を行います。

③輸出入サポート、現地法人のマネジメント
もちろん駐在員ともなるとアフターサービスや機械の営業以外の仕事も多いです。例えば、輸出入の管理や、現地法人のマネジメントを行ったりします。海外駐在では日本人も少なく、自分の裁量が大きくなるため、経営・経理業務、書類や輸出入の管理、また管理職であれば現地職員の採用や人事考課などマネジメントの仕事もしなければなりません。日本でも大切ですが、海外ではより売ったモノのお金を期日通りに回収することも大切な役割です。現地法人はキャッシュをあまり持たないことが多く、機械のような受注→納入してから代金を回収するまでの期間が長いものでは、回収が遅れると現地法人の存続に関わってしまうこともあります。現地営業員の回収も含めてそれらのマネジメントも自分で行わなければいけません。反面この裁量が大きい部分は、日本のように様々な人のお伺いを立ててことを運ばなくても良いので海外駐在経験者が駐在を好きになる大きな理由でもあります。
機械メーカーの海外での役割
①機械の販売、アフターサービス
機械メーカーの場合、取引先は現地企業も多いです。また周辺国もまとめて管理している場合、周辺国の現地企業とのやりとりも多いです。主には現地の販売代理店(商社のような企業)に機械の販促活動を行ったり、直接エンドユーザーに訪問して、機械の営業、アフターサービスを行います。基本的に英語(や現地語)でのやりとりも多いと思われます。
機械メーカーにもよりますが、工作機械メーカーは基本的に海外売上比率が60~70%を超えている企業も多く、現地企業を相手にすることの方が多いと思います。
もちろん現地に進出している日系企業とも取引を行います。その時には間に商社が入っている場合もあります。

②展示会の出展、納入済み機械の管理
日本のメーカーの機械は、高精度な反面、高額であることが多いです。そのためなかなか購入まで至りませんが、一度購入されると高精度で、故障が少ないことなどから、リピートされることが多いです。そのため、まず知ってもらうために海外の展示会に出展したりなどを繰り返し、現地企業にPRしていかなければなりません。
また高精度な反面、国や企業によっては軍事利用や犯罪に利用されないよう厳しい輸出規制が課せられています。納入先は問題なくても、知らないうちに他の企業へ転売されていないかなど、正確な納入済み機械の管理が求められます。輸出規制に違反すると、輸出禁止措置などを課せられてしまうことがあり、一挙に会社の存続を揺るがしかねないダメージを受けることになります。これらの規制管理も駐在員に求められる役割です。
メーカーと比べてどちらが良いか…それぞれでできる大型プロジェクト
ローカル企業と取引をメインで行いたい場合は機械メーカー
おそらく「現地でローカル企業と取引をしたい」ということが目的であれば、先述の通り機械メーカーの方が良いです。また機械メーカーにはあまり海外駐在を希望して入社している人が比較的少ないので、積極的に手をあげていれば海外駐在のチャンスが巡ってきやすいと思われます。そのため機械メーカーで海外へ行く方は元々海外志望の方も多く、一度駐在すると別の国に行っている場合も多いです。ただし拠点数や駐在員数は機械商社の方が多いことが多いです。
機械商社では先述の通り、日系企業のお客様の対応がメインです。海外にいても日本語で日本の企業の方に営業をしていることが多く、日本人が少ない分人間関係も深くなります。ゴルフや食事など、良くも悪くも海外の方が接待が多いイメージがあります。
機械商社としてできる大型プロジェクト
ただし新工場建設時の立上サポートなど機械商社だからこそできる大型プロジェクトもあります。海外での新工場を建てる際には、その国のことをわかっている商社に依頼することも多く、国内での今ままでの付き合いに縛られない取引が可能です。工場全体の生産設備一式や工場建屋の工事、それらの業者の斡旋まで一挙に請け負うこともできます。お客様側も生産設備や工具関係を一社に任せることができれば、自分でそれらの管理をする手間が省けて、現地での雇用や生産計画・準備などに費やすことができます。そのようなプロジェクトを受注した際は数億〜数十・数百億規模の取引になることも多く、輸出入・現地での立ち上げサポートを含めた機械商社ならでは力を発揮できます。
昨今ではコロナ禍による中国での一拠点での生産のリスクから、ベトナムやフィリピンなど東南アジアでの生産に再度生産を移すことなども多く、このようなプロジェクトも多いです。

機械商社の海外展開の今後
では機械商社の海外との関わりは今後どのようになっていくのでしょうか。海外展開している商社の多くは、海外拠点を強化していく姿勢の企業が多いです。下記に代表的な機械商社の今後の注力分野をまとめていますが、海外拠点特にインドに注力している企業も多いです。
今後はより仕入先のローカル化が進んで行くと思われます。具体的には、現地での顧客(主に日系企業)の生産ラインの設備やその他機器類・工具類を現地で調達することです。エンジニアリングも含めてそのような現地調達、生産ラインも地産地消が求められています。今後の海外駐在は、日本の機械を現地に持ってくる輸出入の管理よりも現地調達の管理の方が多くなるかもしれません。日本では普通にできることが、海外ではうまくいかないので、設備を海外で生産することは非常に困難が伴いますが、それらを実現することを求められていくと思われます。
どのような人が駐在しているか。駐在のメリット
では実際にどのような人が駐在しているのでしょうか。駐在員になるために何が必要なのでしょうか。
学生時代の語学力はほぼ不要
「語学力が必要」と感じる人も多いかもしれませんが、語学力よりも日本での日々の仕事をしっかりこなすことの方がよほど重要です。そのため語学力や留学経験よりも、コミュニケーションだとかリーダーシップ、チャレンジ精神などの経験の方が重宝されると思います。語学はあった方がよいですが、後から身につけることもできるので、「語学ができるから駐在員になれた」という人は機械商社・工作機械メーカーともに少ないです。
現地法人では数少ない日本人になるため、自分のやりたい仕事だけでなく、頼まれる仕事も多いです。会社のことも・仕事のことも理解して、頼まれたことをこなすことができる人、つまり若い内から日々求められた業務をこなすことはもちろん、積極的にチャレンジして成果を出すことができる人が求められます。(これは海外駐在に限らないかもしれません。)
異文化を受け入れられる人
日々の業務をしっかりこなすことの他には、「異文化を受け入れられること」が大切だと思います。語学は不要といいましたが、やはり現地の人とのコミュニケーションは取らなければならず、現地の文化を受け入れることも必要になります。食事も含めた生活も日本とは違い、慣れずに苦しむ人も多いのも事実です。異文化を受け入れられる人の方が、海外で成功しています。

もし留学経験や語学学習の経験を就活でアピールしようと考えている場合は、少し考え方を変えて留学や語学学習で異文化を受け入れてコミュニケーションを取るためにどのような工夫をしたかをアピールされると良いと思います。それらのエピソードから、異文化圏でも順応でき語学も身につけられる(既に身につけられている)と判断されると思います。
駐在のメリット
駐在員になるメリットは、現地・日系含めて様々な人と出会えることだと思います。年齢や役職関係なく、深い仲になれるため駐在後も関係が続きます。
また外から日本を見ることができることもメリットです。日本国内でずっと同じ場所にいると、考え方やコミュニティも凝り固まってしまいますが、駐在して一歩外から日本や自分の会社、自分を見つめ直すことで、より客観的に物事を考えられるようになると思います。
商社を目指している友達といると駐在員と聞いてもあまり珍しくないかもしれませんが、世の中で見れば駐在員は少数派ですので、転職市場でも武器になります。
就職活動時に考えた方が良いこと
これまで簡単に機械商社で”海外で働く”ということに関して解説しました。機械商社・工作機械メーカーの駐在員には興味を持ってもらえたでしょうか?
もし”海外で働きたい“と考えて就職活動をしている場合、自分が海外でなぜ働きたいか、どのように働きたいかということを深掘りすることと、
なぜ海外で働きたいと思ったかによって、適する業界や企業、職種も違います。またいきたい国が決まっている場合は、配属のリスクを考えると現地で採用活動をしている企業の方が適しているかもしれません。実際に機械商社の海外拠点でも現地採用で働いている日本人の方もたくさんおられます。その国が好きで、その国内で様々な企業で働いてキャリアを形成している方もおられます。
また、”海外と関わりたいけど、国内に住んでいたい”という目的であれば、商社やメーカーでも海外営業部など、国内本社に出勤しながら海外の顧客を相手にする部署もあります。そのように自分が海外とどう関わりたいかといったことで、働き方や志望する企業も変わってくると思われます。そして選択肢は”海外”=”商社”でもなく、新卒採用の就職活動だけでもないので、視野を広く持って自分に合った企業を探されることが大切なのではないかと思いました。