トラブルにならないロボットシステムメーカー選定基準 おすすめの企業4選

トラブルにならないロボットシステム選定法記事の写真 機械/メーカー解説
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 リモート化、人手不足も重なり昨今より注目されている産業用ロボット。しかし導入後にトラブルが多いのも事実です。今回は導入する際のお勧めメーカーと導入後にトラブルにならないための選定基準を紹介します。

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ロボットシステムを導入するならどこのメーカーが良いの? (関西、東海)

 それぞれ得意不得意な分野があるためあくまで参考程度ですが、選定基準を元に関西や東海でおすすめのメーカーを4社紹介します。

松浦鉄工所

ロボットで次代を切り拓く | 株式会社松浦鉄工所
松浦グループが最も大切にしているのは「こころ」。少しでもお客さまの力になりたい、支えたいという熱意です。あらゆる生産現場でロボットが不可欠である昨今、私たちの果たす役割は今後ますます大きくなることでしょう。人に、社会にやさしいロボットで次代を切り拓く。私たちは全社一丸となってそのミッションに挑戦し続けます。

創業70年以上のエンジニアリングメーカー
ロボットシステムの中でも搬送関係が得意。機械へのハンドリング、パレタイジング、ローダーと組み合わせた大型搬送ライン等の実績が多数。自社ブランドのローダーも製作。
マシニングセンタや旋盤メーカーから多数ロボットシステムを受託しているため機械メーカーからの信頼も厚い。

三明機工

三明機工株式会社 | 産業用ロボット技術・システムインテグレーターで業界をリードする
システムインテグレーターで業界をリードする

従業員95名と規模が大きい。
展示会によく出展しておりマーケティングにも力を入れている印象。
MUJIN社製ソフトウェアを使った3次元バラ積みピッキングなど、様々な3次元カメラを使ったシステムも得意。アルミダイカスト関係では、搬送だけでなくバリ取り、湯口切断など後工程も合わせて製作が可能。

高丸工業

産業用ロボットシステムインテグレータ|髙丸工業(株)
生産性の向上に挑戦するロボットシステムインテグレータ(SIer)です。産業用ロボット、ロボットシステムの企画・設計・製作・販売からメンテナンスまでお任せください。

大型の溶接ロボットなどの実績が多数。溶接治具やポジショナも含めて製作が可能。
教育やコンサルタントにも注力。様々な方法でロボットの活用方法を学ぶことができるロボットテクニカルセンターを運営。高丸工業内のロボットを使用してスクールなどを受けることができる。

東洋理機工業

ロボットシステムインテグレータの東洋理機工業株式会社
熱間鍛造・化学分析・サンプリングによる自動化、サービスロボット・産業用ロボット・次世代ロボットのシステム開発などロボットシステムインテグレータの東洋理機工業株式会社にお任せください!

こちらも創業70年以上。
大型の熱間鍛造などプレス周辺のロボットや多様な特殊システムの実績が多数。
協働ロボットを使用したシステムも提案が可能。

良いメーカーを見分けるポイントとは?

ロボットインテグレータによるティーチング作業の写真
インテグレータによるティーチング作業

 ロボットシステムを導入しようとしたときに、どのメーカーを選ぶかでその後の会社の業績が大きく変わってしまうこともあり得るほど、メーカー選びは重要な問題になります。
そこで「優良メーカー」を見分けるポイントを7つご紹介しておきます。

「優良メーカー」を見分けるポイント7選
1.類似実績と提案内容で判断する
2.工程を内製しているメーカーを選ぶ
3.電気・ソフト設計者がいるかどうかを確認する
4.組立人員の数、メンテ体制、所在地を確認
5.営業担当者がいるメーカーを選ぶ
6.仕様が明確に説明されているか確認する
7.丸投げせず業者と打合せを重ねて自社に適したインテグレータを選定する

それでは詳しく解説していきます。

類似実績と提案内容で判断する

 技術力があるかを判断するには、同条件でテストをすることがベストですが、新たに治具の製作が必要な場合や、ユーザー側の設備との連携が必要といった場合は困難です。その場合は、類似実績の資料(動画や参考図など)を見せてもらう、または出荷前の類似の機械を見に行くなどをして判断することが必要になります。

 類似実績があればどの部分が難しいかを把握していることが多く、打合せでも難しい旨を正直に話してくれたり、実現するための様々な方法を提案してくれます(例えば、どのワークのどの部分が難しいのでそれを省けばできる等)。そのような提案があるかどうかも判断基準の一つになります。

カメラを利用したロボットシステムの例
カメラを利用したロボットシステムの例

工程を内製しているメーカーを選ぶ

全ての専用機・自動機を導入する際に気をつけなければなりませんが、企業体制も非常に重要です。企業規模も様々で、作業を協力会社に外注をしていることも多いからです。専用設計のため製作してみなければわからない部分(後から修正が必要になる部分)がどうしてもあり、できる限り工程を内製しているところを選定する方が対応面で安心です。

電気・ソフト設計者がいるかどうかを確認する

電気・ソフト設計者がいるかどうかを確認することが最も重要です。

定義
ここでいう電気設計 = 機械の配線や制御盤、操作盤の設計・製作
ここでいうソフト設計 = 機械の動きの回路設計(ロボットや機械がどのように動作するかの回路やインターロック回路、タッチパネル内の構成の設計)

 システムを製作してみてからの修正の中でもソフトの修正は必ず発生します。表示内容を変更するぐらいでしたらそこまで難しくはないですが、動作や安全回路を追加する、新しいワーク品種の追加に伴い動きを改造する等といったことがよく発生します。電気・ソフト設計者がいれば何かそのような修正や問題があった時も対応が早いです。反対に外注している場合、「電気が悪いのか、メカが悪いのか」といった争いで対応が遅くなることや、ほんの少し修正してもらうだけでも外注のため費用がかかってしまうことがあります。

電気・ソフトの調整を行う作業者の写真
電気・ソフトの調整を行う作業者

組立人員の数、メンテ体制、所在地を確認

 一般的に組み立てた人が立上も行うことが多いですが、設計者が組立、立上まで行うこともあります。ただその本人のみしかわからない機械になってしまっては、その人が不在の時や退社した時に誰もわからなくなります。企業としてその辺りのフォロー体制があるかどうかを確認する必要があります。
 具体的には、発注前であれば組立人員の数、メンテ体制を確認。発注後には、立会時などに組立担当以外に組立の部署の責任者に同席いただく等、一人にしかわからない状態にしないことが必要です。実際には作業者個人次第の部分も多くメカも電気もできる人が担当の場合や、メンテ担当にそういった方がいれば安心です。
 またメーカーとの地理的な距離も非常に重要です。同じ地域(片道~1.5時間)にあれば安心です。緊急時もどこかの帰りでも寄ってくれたりします。逆に対応に時間がかかるため、遠いメーカーはお勧めしません。

営業担当者がいるメーカーを選ぶ

 社長が営業を行っている企業も多いですが、営業担当者がいるところがベストです。社長は判断が早いので非常に助かりますが、発注後は忙しくて細かな対応に時間がかかったり、忙しさを考慮して問合せを遠慮してしまうことも多いです。企業体質や設備内容にもよりますので一概には言えませんが、できれば営業担当者についてもらって対応頂く方がコミュニケーションがうまくいきます。

仕様が明確に説明されているか確認する

構想図を書いている途中の写真
要求仕様書や構想図にてやりとりが必要

 ロボットシステムは専用機になるため、仕様を細かいところまで明確に要求する、打合せで詰めるということが難しいです。しかし後で問題にならないよう極力発注前に明確にすべきです

ユーザー側が確認することとは?

ユーザー側としてどういったシステムを求めているのか、具体的に次のようなことを明記する要求仕様書を作成する必要があります。

要求精度・内容・時間どのように搬送するか、どこのバリを取るとか、どの検査をするとか、どの部品を組み付けるか等の内容や精度、サイクルタイム
検収条件どこまで行えば合格か。例えば1日流動生産して何%以上で合格等
安全基準ユーザーの工場では安全基準はどのようなものがあるか。カバーやインターロックなど。
設備基準購入部品の指定やその他ユーザーの工場での設備基準があるか。
要求仕様書に明記する必要があること

 要求仕様書が作れない、作り方がわからない時は打合せ等で決めることになります。ここを細かく擦り合わせしておかなければ、導入後に問題になるため厳密に打合せする必要があります。

インテグレータ側に確認することとは?

 見積には見積仕様書や構想図など内容を補足する資料があるかを確認する必要があります。どのような設備でどこまでが見積範囲・責任範囲かが、明確に書かれている方がベストです。
 よく見積仕様書はなく過去実績の参考図だけというパターンがありますが、その場合は入念に確認しておく必要があります。
 逆にしっかりした仕様書やこの案件独自の構想図を提出してくれる業者であれば非常に安心ですが、ユーザー側の要求に漏れがないか確認しておかなければ後から追加費用が発生するため注意が必要です。(細かな部分までしっかりしたメーカーほど、ユーザー側に求められる情報の精度も高くなります。

丸投げせず業者と打合せを重ねて自社に適したインテグレータを選定する

 もちろんここまで紹介した留意点全てを対応してくれる業者が一番なのですが、その分価格も高いところが多いです。反対に打合せ段階では価格も安く「対応できる」と言っていても実際には仕様の漏れがあり追加費用がかかり、結局高くなる場合もよくあります。
 そのためどこまでの設備を自社が必要としているかを入念に考え、業者と打合せを重ねることで価格も含めてより自社に適したインテグレータを選定できると思います。
 また業者に丸投げではなく、自社にあったシステムを一緒に作り上げていく姿勢で、初めての場合は追加費用は必ずかかると考えておく方がよいと思われます。

ロボットシステムを作り上げる人の写真
ロボットシステムを共に作り上げていくことが重要

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ロボットシステムは導入後のトラブルが非常に多い

ロボット導入後のトラブルに関する写真
ロボットシステムのトラブルに関する不安

 ロボットシステムは自社にあった形に設計する専用機となり、量産ラインで作業者が介入せず自動で稼働しなければならないため、導入後も非常にトラブルが多いのも事実です。私も何度も導入後に夜中まで立上げ作業を行ったことや、毎日のように不具合があり呼び出されたこと、事前打合せが甘く費用がかさみ誰もが後味が悪くなったこと…など本当に辛い経験もしました。

導入後のトラブル事例

①お互いの認識が違った。修正するために予定より費用がかさんだ。
②よく停止するから自動化の価値が見出せなかった。
③トラブル時の対応が悪かった。
④できると言っていたことができなかった。

などユーザーからも様々な声を聞きます。
ごく一部ですが、私が経験した上記の例を紹介します。

実際にあったトラブル事例① お互いの認識が違った。修正するために予定より費用がかさんだ。

 ユーザー側とメーカー側で認識が違うことはよくあります。事前の打合せでは議題に上がらず、メーカー側が思っていた通りに作るとユーザー側にとっては不便だったりします。

 例えば、私が5年目の時、6品種のワークを扱うロボットシステムを導入しました。品種が多いため治具の段取り替えが多いシステムでした。メーカー側の設計は頑丈な治具でしたが実際の作業性が考慮されておらず、重いものを持ち上げたり、多数のボルトを取り外さなければならないため危険作業で時間がかかりすぎました。結局治具を製作し直すため2,300,000円もかかってしまいました。
 原因は事前の確認不足でした。承認図面でのやりとりはしていましたが、段替え部の詳細は図面ではわからず実際の機械を見てからしかイメージができませんでした。ユーザー側の要求(段取り替え時間や重量)も明確ではなく、細かなところの確認はおろそかになっていました。

 要求仕様書などの書面での確認や細かな部分、ニュアンスまで細かく確認、理解することに気をつけるようになりました。

段取り作業の写真
段取り作業の写真

実際にあったトラブル事例②よく停止するから自動化の価値が見いだせない。

 一番辛い思い出ですが、せっかく自動化システムを導入したのに1時間に1回以上チョコ停(何かのエラーで停止)が起こるため結局作業者がつきっきりとなり大クレームを受けたこともありました。

「治具の位置きめ精度が悪く、ロボットが運んだ製品がをうまく治具に収まらない(ズレてチョコ停になる)」、「数個流すとすぐにソフト上のバグでエラーが起こって機械が止まる」、「位置が少しズレただけでエラーになる(位置条件の設定値が厳しすぎる)」といったことが頻繁に起こり、導入当初は修正のためにつきっきりで立会となってしまいました。
 導入後すぐに製品を生産しなければならず、昼勤で生産立会・都度修正、夜に修正を繰り返しました。納入から検収(システムを引き渡し支払いの許可が降りる)まで8ヶ月かかり、2年たった今でも修正点が出てきます。
 原因は、位置決め精度が悪いメカ設計(治具をピンで止めていなかったり、ラフなガイドにしてあったり、ロボットのハンド側が誤差が多かったりなど)であったり、納期に遅れが出てソフトのバグ出しする時間がないまま納入してしまったことでした。

 量産での稼働を意図した設計か、位置決め精度や再現性はあるか、納期に遅れが出ないよう設計時点から管理しているか、バグ出しのスケジュールはあるか、電気担当は余裕があるかなどを都度気をつけるようになりました。

実際にあったトラブル事例③トラブル時の対応が悪い。

 会社としても初めてのメーカーに依頼した時に、トラブル時の対応が悪く非常に困りました。特に先述したように電気・ソフト設計を外注しており、トラブルが起きた時にまずどの担当が悪いかを確認することや日程調整に時間を要し、緊急時でも1週間後や、緊急度が下がると2ヶ月後の対応となり、ちょっとしたことでも費用を請求されたりしました。また空いてる外注に頼むため人が変わることも多く、内容が引き継がれておらず別のバグを引き起こして帰っていったこともありました。他にもユーザーまで車で片道3時間かかり、地理的にメーカーが遠いことも対応が遅くなる原因となりました。(3時間は極端に遠いわけではないですが、片道〜1.5時間以内が理想です
 逆に「トラブル時にすぐ対応してくれた」ことが好印象となりリピートをもらえることも多々あります。先日も導入後2~3ヶ月間トラブルで揉めた会社でも、その時の対応を評価頂きリピート受注しました。

 電気・ソフト設計を含め工程を内製しているか、地理的に近いか、万が一の対応を依頼できる信頼関係があるかを重視するようになりました。

実際にあったトラブル事例④できると言っていたことができなかった。

 2年目の若手時代には、メーカーの営業(社長)の話を良いように鵜呑みにして、打合せではできると言っていたのに、製作してみたらできなかったということがありました。
 バリ取り機でどうしても事前テストができない中で「これぐらいであれば問題なくバリは取れます」と言っていたが、製作してみるとロボットの位置決め誤差や剛性面が足りずバリが取れないことがわかりました。ツールを新しく選定、機構を改造するなどしてなんとか形にしましたが、予定より5ヶ月遅れで納入となりました。さらに納入後に量産してみると、ツール寿命が短過ぎてすぐに交換しなければならず、想定の3倍のランニングコストがかかることがわかりました。
 原因は、事前検討の甘さでした。メーカーは実績からできると判断したが、ワーク形状や材質が微妙に違ったためバリのとれ具合が違いました。
 事前にできるだけ実物でのテスト、事前打合せで曖昧な表現を鵜呑みにせず詳細な質問をしてイメージを具体化させることに気をつけるようになりました。

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ロボットシステムとは?

 ロボットは実際は単体では生産ラインで効果を発揮しません。製品を掴むハンドや周辺装置を自社のラインにあった形で製作、動作のプログラミングをして初めて生産ラインで使用できます。生産ラインで使えるようにしていることを一般的にロボットシステムと呼びます。

カメラなども含めたロボットシステム例の写真
周辺装置を合わせたロボットシステム例

 自社でプログラミングや装置を製作できる方がいる会社は、本体のみ購入してその担当者がシステムを製作すれば問題ありません。そうすればコストも下げることができ、修正したい時もすぐ対応ができるため非常にメリットがあります。
 しかし現実問題としては専門業者に外注するところがほとんどです。装置設計、ソフト設計(プログラミング等)、細かな修正等ある程度専門知識が必要で人材不足な中あまりそこに人材を割けないことが多いからです。
 そのシステムを専門で製作する会社を一般的にロボットシステムインテグレータと呼びます。自動機や専用機を設計・製作できるメーカーで小さい企業から大きな企業まで各地域に数多く存在し価格帯も様々です。
※ロボットメーカーは一般的に本体の販売のみですが、提携先を設けているところもあります。

ロボットシステムインテグレータに関してのわかりやすい説明
ロボットに命を吹き込む仕事。| 一般社団法人 日本ロボット工業会(JARA)
工場の生産ラインやサービス業の現場でロボットが活躍するために、「ロボットシステムインテグレーター(ロボットSier)」と呼ばれるプロフェッショナルの仕事が不可欠です。
(ロボットに命を吹き込む仕事 一般社団法人日本ロボット工業会HP)

 

まとめ

 今回はお勧めロボットシステムメーカーと導入後にトラブルになりにくい選定基準や注意点を紹介しました。実際には、自社の製品や工程にあったシステムが得意な業者に頼む必要がありますが、極力導入後のトラブルが少なくなるように考えました。今回紹介した項目をチェックリストにまとめました。ロボットシステムメーカーの選定の参考になれば幸いです。

チェックリスト
☑︎類似実績や技術的な提案はあるか
☑︎工程は全て内製しているか
☑︎特に電気・ソフト設計社はいるか
☑︎組立人員の数、メンテ体制、所在地は問題ないか
☑︎電気・ソフト設計者がいるか
☑︎組立人員はどのような人か、メンテは誰が行うか、複数人いるか
☑︎担当営業がつくか
☑︎ユーザー側の要求仕様・精度・サイクルタイムは明確か
☑︎検収条件は明確か
☑︎ユーザー側の安全基準は明確か
☑︎ユーザー側の設備基準は明確か
☑︎業者側の見積仕様書、構想図はあるか
☑︎業者側資料の見積範囲・責任区分は明確か
ロボットシステムインテグレータ選定の確認項目
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