2022年6月29日〜7月2日まで名古屋で開催されたロボットテクノロジージャパンに行きました。産業用ロボット自動化システムに特化した展示会でしたが、製造業のメッカである名古屋で開催されるだけあり、ロボットメーカーだけでなく工作機械メーカーも多数出展していました。
今回はそこで感じたトレンドを簡単にまとめてみました。※展示会の個人的な感想を述べる記事になります。
AMR+協働ロボットによる必要な時に必要な部分だけ自動化
特に工作機械メーカーではAMR(無人搬送ロボット)に協働ロボットを乗せて、自動で必要な時に必要な場所で自動化を行うシステムが多く出展されていました。2020年のJIMTOFでも紹介が多かったシステムですが、より搬送の精度が向上していたと感じました。
具体的には、DMG森精機やファナック、ヤマザキマザックではカメラでQRコードやマークを読み取り、AMRが毎回位置を確認してから設備に搬入することで繰り返し精度を向上させていました。
DMG森精機
このマークを読み取り位置認識する機能により空間位置精度±1mmまで実現できるようです。展示会では円筒のシャフトを3つのリングの内径に差し込んでいくデモを見せていました。通常は少しでもズレていれば2つ目以降の内径にぶつかりますが、綺麗にシャフトを3つのリングに通すことができていました。

ファナック
協働ロボットで旋盤にワークを取り付ける際、ロボットの位置精度の誤差を吸収するため、ある程度の位置までロボットがワークを持っていき、その後はチャックの爪に倣わせてチャックすることで芯ズレをなくす機能を紹介していました。新型の協働ロボットではプラグイン式で様々な周辺機器を取り込める形になっています。ロボットハンドなど様々な周辺機器のメーカーがプラグインの機能を作っています。
これらのように今までにもあったAMRと協働ロボットのシステムでの必要な時だけ自動化するシステムですが、繰り返し精度の向上などより現場での実用性を高めていると感じました。実際に現場で使われ始めて出てきた様々な課題をクリアしていってる段階なのだと思いました。今後、より細かな現場から出てくる不満や課題を解決できていけば、一挙に広まっていくのではないかと思いました。
AMRによる完全自動化工場
ロボットメーカーはAMRや協働ロボットによる完全自動化工場を展示していました。特にダイヘンと安川電機の2社の展示が印象に残りました。
ダイヘン
溶接ロボットに強みを持つダイヘンは、昨今AMRに非常に力を入れています。ダイヘンのAMRの特徴はタイヤがオムニホイールで360度全方向に動くことができることです。通常は前後など進行方向が決まっており、ある程度横に動けたとしても90度反転する必要や、切り返しをする必要があります。しかしダイヘンのAiTranシリーズは、その場から360度全方向に進行できます。そのため狭い工場や物流現場でも使用しやすいAMRです。さらに同じAiTranシリーズでフォークリフト型のAMRも展示していました。無人フォークリフトなどは前からありますが、このAMRサイズの小型で360度小回りが効く無人フォークリフトは初めてみました。また段差にも強く、工場現場に引かれているケーブルラックも乗り越えることができます。そのように狭い日本の工場現場での活用を想定されたAMRだと感じました。
安川電機
ロボットメーカーの安川電機も完全自動化工場を提案していました。こちらはAMRに協働ロボットを乗せたユニットが製品を自動で認識して、ピックアップ、整列・パレタイズ、組立などを行うデモを展示していました。複数の同様のユニットが連携して組立を行うシステムを展示しており、バーチャル空間でのティーチングもできる工場全体の完全自動化ソリューションを提案していました。組立工程のセル毎に自動化するシステムを工場全体でデータ管理するシステムです。これらはNC装置やサーボモーター、制御機器、ロボットなど自動化に関わる機器を全て製作している安川電機だからこそ提案ができることだと感じ、完全自動化工場を実現するソフトウェアにも力を入れているようでした。
Mujin
物流の自動化システムで有名なmujinもAGVによる完全自動化工場を提案していました。独自のアルゴリズムで複数のAGVのルート制御も最適化でき、バラ積みピッキングができる搬送ロボットとも連携できるシステムになっていました。ティーチングレスに強みを持つソフトウェア会社ならではの仕組みで完全自動化工場を実現していました。
工作機械の中や上での省スペースな自動化
工作機械の中や上にロボットを搭載して自動化をするシステムも数個展示がありました。こちらも2020年のJIMTOFやそれ以前からあるシステムではありますが、メーカーの方に聞いてみると、実績も徐々に増えてきているようでした。何よりも省スペース化が重要なユーザーでの実績が多く、多軸ロボットや協働ロボットを機械の外に別置きするよりもメリットを感じるのだと思いました。
オークマ
既に有名ですが、オークマのARMROIDは旋盤や複合加工機の機内に取り付けられたロボットです。省スペースでのワークの自動搬入出はもちろん、エアブローを狙い撃ちしたり、加工中に下から支えるなど加工の補助ができることが何より魅力的です。
エンシュウ
マシニングセンタメーカーのエンシュウでは機内にローダーが付いている縦型マシニングセンタがあります。機内にあることで省スペースでさらに機械のNC装置で全操作ができることが魅力です。
高松機械工業
旋盤の前にロボットを搭載して、ワークの搬入出だけでなく、引き出し式のストッカーの開け閉めもロボットで行うような機能がありました。
シチズンマシナリー
同じく自動盤や小型旋盤がメインのシチズンでは、機械丈夫のロボットがワークの搬入出だけでなく、防錆油への塗布工程なども行うなど前後工程も含めた省スペースな自動化を実現していました、
工作機械自体の機能向上による”自動化”、”生産性向上”
「工作機械にロボットをつけて自動化」ではなく、工作機械自体の機能、品質を上げることでチョコ停が少ない本当の意味での自動化や生産性向上をうたっているメーカーもありました。具体的には、熱変異が少ないため自動化してもチョコ亭が少ない、高品質なものづくりができることで生産性が高くなるという意味あいですが、この展示会で展示していることに工作機械メーカーのプライドを感じました。
安田工業
機械が高剛性のため、寸法のズレが少なく、補正をする必要性が少ないため生産性が高い。また、機械の熱変異が少ないので、繰り返し精度がよく高精度に自動化ができる。プログラムに対して高精度な追従が可能なため、プログラム修正が少ない。これらによって総合的に機械が止まっている無駄な時間が削減できるという内容でした。
JTECT
円筒研削盤の新機種G1シリーズを展示。クーンラントの流れる回路を考えた設計により、ベッドにクーラントがたまらず、ツーリングエリアにも入らないため熱変異が少ない。また高精度な転がり軸受やリニアガイドによりといし軸の回転精度が高く高品質、高生産性なものづくりができる。またそれらの高精度な機構に加えて高速ローダーのため加工時間を短縮でき、チョコ停が少ない自動化を実現できるという内容でした。
CO2削減
昨今非常に話題のカーボンニュートラルに関する展示もちらほら見えました。これらも今までにもあった内容ですが、使用していない時に止めることや無駄になっているエア・電気を減らすという内容でした。
工作機械としては、使っていない時に止める省エネシステムを展示していました。工作機械に使われているモーターや機器類を段取り替えや温度などが落ち着いた加工中など使っていない時に止めることによって消費電力を削減していました。
その他、様々な機器を使ったCO2削減方法も提案されていました。例えば、IAIはエアシリンダーからエレシリンダーにすることで省エネになると提案していました。バイス、クランプなど様々な機器類の省エネ方法や事例が紹介されていました。
2022年のJIMTOFでは各社様々な方法でのCO2削減がメインテーマになるのだろうと思いました。ユーザー側としては、大手企業や自動車メーカーなどでは進んできているCO2削減が実際にできるかどうか、費用対効果があるのかといった部分をチェックしていくべきではないかと思いました。