スマート工場(IoT化・DX化・見える化)とは?効果から見た目的やメリットを解説

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昨今よく耳にするスマート工場。IT企業やコンサルなど製造業以外からも様々な種類のスマート工場が推奨されています。さらには”DX”も提唱されています。しかしスマート化、IoT化が実際現場から切に求められているか、使われているかというとそうでもないと思います。そこでスマート工場やIoT化でどのようなことができるのか、現在製造業の課題含めて製造業側の目的やメリット・効果”から紹介したいと思います。

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そもそもスマート工場、IoT、DXとは

スマート工場

 スマート工場と工場のIoT化は意味がほぼ同じです。主に工場内での設備や人が常時ネットワークに接続されることにより、データが管理されて見える化された工場のことを指します。最も一般的な事例は、マシニングセンタなどの工作機械がネットワークに繋がり、離れた事務所から稼働状況をリアルタイムで把握するようなイメージです。

※IoTとはIndustrial of Thingsの略で全てのモノがインターネットに繋がった状態のことを指します。様々なモノがインターネットで繋がっていることでデータでの管理ができるようになります。一般的には、車や家電など全てのモノがインターネットで接続された状態のことを言います。
※DXとは、Digital Transformationの略で、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」(wikipediaより引用)ことのようです。IT技術、すなわちデータやデジタル技術を生かして生活や経営、サービスを改善することです。

ここでは工場のDX化、つまり工場内でのデジタル技術、ITの活用による改善を指します。具体的には、データ管理でのトレーサビリティシステムの構築や、シミュレーション技術によるライン試加工時間の削減、設計と製造のデータを連携させることでPLM最適化などです。
※そもそもの発端はドイツのインダストリー4.0に関わることですが、様々なところで紹介されているので割愛します。

※詳細な具体例は別記事でまとめる予定です。

本記事では、工場のIoT化、DX化でできることを紹介をしたいと思います。

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多品種少量生産の実現:見える化やデータ管理の統合、シミュレーション

 現在は多様な製品を少量かつ短納期で求められる多品種少量生産の時代です。実はIoT化、DX化に取り組んでいる企業の中で最も多い目的は「多品種少量生産の実現、効率化」です。実際にものづくり白書2020で紹介されていたIoT化事例でも、多品種少量生産に対応するために稼働状況を見える化して、受発注システムとも連携するといった事例が複数ありました。

多品種少量生産における課題に対してのIoT化、DX化による解決方法は次の3点です。

多品種少量生産の課題と解決方法

・見える化による生産管理/生産効率化

多品種少量生産には、急な要求や小ロッドでの生産に対応できるフレキシブルな生産ライン体制が必要であり、営業や経営者側も意思決定のために常に工場の状況を把握していなければなりません。

設備や人の稼働状況を監視することで、設備の細かな生産計画・進捗がリアルタイムに把握、調整できます。そうすることで急な変更や小ロットに対応できるフレキシブルな生産ができるようになります。”稼働状況を見える化して生産効率をあげる“ことはよくIoTの目的として提唱されていますが、それだけでなく”稼働状況を見える化して生産状況を把握することで多品種少量生産に対応できる“ことが実際の現場で求められています。今まで人がいちいち連絡を取り合い把握していた部分が、どこからでも一目でわかるようになれば、意思決定に有する時間も削減することができ、新たな市場開拓にも繋がります。

見える化による多品種少量生産の画像

・設計と製造のソフトウェアによる連携

製造業のスマート化、DX化の大きな課題の一つに設計と製造現場側のソフトウェアが連携されていないことが挙げられます。具体的には、設計側と製造側で使っている図面データが違うことです。設計で使う部品図(E-BOM)は製品を構成する部品が記載されていますが、現場で使用するM-BOMには工程や在庫数などが記載されています。さらに現場のQC工程表には、QC関連のこと、工程詳細、作業手順等が記載されています。それらが連携されていないため、現場ででた課題や図面変更を設計側に共有できていないことが発生し、フィードバックもされないため設計側でも現場での製造工程を考慮した設計がなされていないことがあります。そのため利益の出る生産体制構築までを踏まえた一つ一つの製品開発(製品ライフサイクル)に時間、コストがかかります。

 要求が常に変化している多品種少量生産時代には、短いライフサイクルで要求に合わせた製品に改善していかなければなりません。そのためには設計と製造現場側のデータ管理を共有、連携されたシステムを構築することが不可欠です。そのようなシステムがあれば、細かい設計変更、工程変更に瞬時に対応できるようになり、要求に合わせて製品ライフサイクルを短縮することができます。このように製品ライフサイクルを短縮、マネジメントすることをPLM(Produt Lifecycle Management)といいます。ソフトウェアによりPLMを短縮することで、短期間で様々な製品の生産ができるようになり多品種少量生産に対応した工場ができます。

設計と製造の連携によるメリットの画像

・工程シミュレーションによる開発時間削減

リアルな工場の他にソフトウェア上で工場を作り、様々な製品を生産する前にシミュレーションする生産方法です。デジタルツインプラントシミュレーションとも呼ばれています。設計してから実際に試作品を作ってみて調整するといったサイクル(時間)、コストを大幅に縮小することができます。先術したPLMの最終目標のようなイメージです。
新しい製品を生産するとき、工程変更をするとき、新しい設備やラインを引くときなど、現場での動きや課題をソフトウェア上で先にシミュレーションすることで、多品種少量生産に迅速に低コストで対応できる工場となります。さらに受注生産の製品を受注時にどのラインで流すかなどもシミュレーションで自動でできるようになれば、完全に自動化された多品種少量生産ラインが誕生します。

デジタルツインの写真

 

※Industry4.0を掲げて世界でも最先端のドイツにおけるトップメーカー、シーメンスも設備の見える化だけでなく、シミュレーション、設計、製造現場で使用されるそれぞれのソフトウェアを完備しています。自社のソリューションのみで設計と製造が連携された多品種少量生産を実現することができます。

インダストリー4.0の写真

 

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人手不足・職人の技能継承への対応:生産技術/現場力など暗黙知のデジタル化/

 もう一つ製造業のIoT化、DX化の目的で多いものは、生産技術や職人の技術などのなかなか数値化できないような暗黙知をデータ化して、技能継承に用いることです。特に日本の製造業は人材不足が深刻で、職人の高齢化が進んでいます。目で見て、自分で実践して学んできた職人さんにとっては、若手に技術を教えようとしてもうまく教えることができない場合も多いです。製造業にとって、職人の技術こそが自社の本質的な強みであることがほとんどであり、それらの技術の継承は大きな課題となっています。

 また製品を効率よく、利益を出せるように生産するラインを構築する力である生産技術や、生産現場をより効率的なもの、より安全なものに“カイゼン”していく技術など、複雑に絡む様々な人やモノ、機械をすり合わせる技術を数値化、データ化しにくいのが事実です。今までこれらは生産技術者や改善担当者などの人の力で行ってきており、日本の製造業の強みとする力でした。これらの“暗黙知”のデータ化もIoT、DXの大きな目的となります。

 

技能継承やすり合わせ力のデータ化を行う方法

・作業手順書、検査報告書など書面を電子化

製造現場で使用される作業手順書検査報告書などの様々な書面を電子化することでデータ管理ができるようになります。今まで現場では紙でかき、後からエクセルに入力していたような作業をタブレットに入力することで自動で蓄積、分析ができます。現場で利用される様々な書面はその会社の技術を表しているため、これらをデータ化、分析することで自社の強みの把握や継承に繋がります。

帳票電子化の写真

・作業自体のデジタル化

カメラやウェアラブル機器などを用いて、職人の技術そのものを記録することができます。ウェアラブルカメラを使えば、職人の作業手順、目線や手の動きを記録したり、再現時にAR機能でサポートすることも可能です。

・人の導線、作業時間の管理

GPS機能のついたセンサで作業者の導線を管理したり、バーコードなどを利用して作業者の工程毎の時間を管理することで、暗黙知のデジタル化、効率化を図ることができます。組立工程などで人によって作業時間が違う場合や、工程が複雑でよく間違いが起こる場合などにそのような管理をすることで、カイゼンを行うことができます。

・生産管理のデジタル化

 設備や人の作業をリアルタイムで見える化することで、生産管理の工数(現場や進捗状況を把握したり、連絡を取り合ったりする工数)を削減することで、職人さんにより高度な仕事をしてもらうことができます。空いた時間で職人の技能継承を行うこともできます。デジタル管理できることはデジタルで、作業者には、人でしかできないクリエイティブなことに専念させるということもIoT化、DX化の目的になります。

品質管理・トレーサビリティ

 IoT化、DX化によって品質管理・トレーサビリティ管理を行うこともできます。トレーサビリティ管理とは、製品がいつ、どのような方法で、どの機械で、誰によって生産されたかをデータ管理することです。リコールなど後から問題が起きた時に遡って確認、ロッドを保証することができます。品質管理が重要な航空機部品や自動車部品を生産している工場では一般的ですが、現在はどのような業界・部品もトレーサビリティ管理が求められるようになってきています。

 品質をデータ管理すること、及び設備状態や作業者の状況をデータ管理することで、不良が発生した時にどのような状況で不良が起こるかを分析することができます。分析して対策を講じることで不良率を減らすことができます。

 もちろん最終製品メーカーから依頼されて行う場合もありますが、部品加工業者、下請け業者でも、問題が起きた時に自社を守るため、品質を安定させるため、その証明のため、自社の生産を分析してカイゼンしていくためにトレーサビリティ管理が求められます。

トレーサビリティ管理を行う方法

・バーコード、QRコード管理

 製品にバーコードなどをつけ、生産ラインの要所要所でバーコードを読み取り、加工結果や測定結果を記録していきます。そうすることでシステム上で製品番号とデータが紐付けされており、データ管理が可能となります。作業者が作業開始前に読み取りを行う場合や、コンベア上や機械上で自動で読み取る場合など、ラインに合わせた形で管理が可能となります。

・稼働状況、加工記録の見える化

機械の稼働状況をNC装置などから取得しておくことで、上記製品番号に基づき、いつ、どの機械で、どの工具やプログラムで加工したかなどを後から把握することができます。問題が起きた時には機械にも異常が出ていたのか、その後の製品はどのように加工していたかなどを把握することができます。特に検査機械測定機械の記録を管理することが重要となります。バーコードなどでの製品管理に加えて、機械の見える化を行うことでトレーサビリティ管理が完成します。

止まらない工場:予防保全

 一般的に日本で見える化、IoT化と言われた際の目標は予防保全いわゆる“止まらない工場”になると思います。工場の現場では設備の故障で生産ラインが停止してしまうことが最悪の状況の一つです。主要な部品が壊れて、部品納期もかかる場合はお客さんへの納期にも影響してしまう場合もあります。

 そのためにIoTにより設備の状況を見える化して、故障を未然に防ぐことでラインが停止することを防ぐ予防保全を行う企業が徐々に増えてきています。

 止まらない機械、止まらない工場にすることで生産を安定することができ、事実上の在庫を減らしたり、より正確な生産計画を立てることにも繋がり、コスト削減となります。

予防保全を行う方法

・機械の見える化による異常検知

機械の主要部品(主軸や駆動部、摺動面、モーターや電気製品など)にセンサを取り付け、異常があれば検知して故障する前に部品交換やメンテナンスを行うことです。

 

・NCデータ、アラーム履歴等の管理・分析

アラーム履歴を管理、分析することで、どのようなアラームがどのような状態で起こるのかを把握、対策をとることができます。今まで起きてから対応していたトラブルを未然に防ぐことが可能となります。主にNC工作機械メーカーにはこのような予防保全を行うことができるオプションも増えてきています。古い設備にも後付けで見える化することもできるソフトも多数あり、IoT化の第一歩として取り組みやすい内容でもあります。

以上、今回はスマート工場やIoT化に関して、予防保全だけでない目的などを簡単に紹介致しました。これらを実現する具体的なツールなども今後紹介していきたいと思います。

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