機械工具商社における機械と工具、産業機器って何が違うの?それぞれのビジネスモデル・商社の存在意義の違い

機械商社 業界研究・就活
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こんにちは。ものづくりを支える機械・工具の専門商社。しかし一言で機械商社と言っても扱っている商品や得意な分野は各社様々です。今回は機械工具商社が扱う製品毎にどのような人が関わり、どのような価値を与えるビジネスモデルなのかを簡単に解説します。

本記事も就活生を対象としています。「機械商社業界を受けてみたけど、各企業の違いがわからない。」、「商社不要論もあるけどどんな価値があるの?」といった疑問の手助けになれればと思います。

機械工具商社での取り扱い製品は、大きく5つのカテゴリーに分けられると思います。

機械本体  :ものを生産することに使われる工作機械産業機械設備本体産業機器・機構部品  :モーターやコンベアなどの駆動機器や、油圧・空圧機器・ポンプなどの機械に組み込まれる部品やユニット工具・消耗品 切削工具、溶接部材など生産現場で使用される消耗品
・工場用品  :トルクレンチなど消耗品ではない工具やハーネスなど安全衛生関係の備品など。
・工場施設設備 :空調設備などの工場建屋に取付けられる設備

機械工具商社が取扱う製品群の画像
機械工具商社が取扱う製品群

本記事ではものづくりに大きく関わる上から4つを取り扱う機械・工具商社に関して、それらの違いを解説します。
※空調などの建屋に関わる工場施設設備に関しては、商社は機械商社業界に振り分けられますが、販売方法やビジネスモデルは建設業よりで大きく違うため本記事では割愛させて頂きます。

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機械本体の販売方法やビジネスモデル

機械本体は大きく分けて卸売総合型の商社と販売店型の商社に別れます。卸売型は販売店型の機械商社に機械を卸しています。販売店型の商社は、エンドユーザーである製造業に対して、機械を販売しています。それらの細かな違いや仕事内容は下記記事を参照下さい。

☆特徴☆

・高額投資でアフターサービス重視
機械本体の価格帯は、1台数百万円〜数億まで幅広く、顧客にとって高額な投資となり、長時間(半年〜数年)かけて検討の上、購入に至ります。消耗品ではないため、数年間使用する前提で購入します。そのため顧客側も投資判断を間違えると事業への影響も大きいため、価格だけではなく加工可否はもちろん、細かな機能や操作性、アフターサービスなどを重視します。

機械本体のビジネスモデル

モノ(What)メーカー例(What)顧客(Who)/顧客の職種機械商社の例
工作機械工作機械メーカー
DMG森、オークマ、ヤマザキマザック等
(卸売の場合)販売店型商社/営業
(販売店型の場合)製造業全般/生産技術,経営層,製造
卸売総合型:山善,ユアサ商事
販売店型:第一実業,マルカ,トミタ,
専用機組立機・検査機など様々な
専用設備、システムメーカー
製造業全般(食品など含む)/生産技術,経営層,製造第一実業,ナ・デックス,マルカ,トミタ

機械商社が提供している価値

卸売総合型の機械商社が与える価値

・販売台数による価格交渉力
機械に限りませんが、購入台数が多い方が仕入れ先から安く仕入れることができます。卸売型の機械商社は販売店型と比べても、仕入れ台数が圧倒的に多いので、仕入れ価格のメリットを出せます。

機械の金額は需要や材料費の影響やユーザー毎の特殊仕様によっても大きく変動します。変動が大きいため価格交渉力はメリットになります。

・展示会や全国拠点など販促ネットワーク
卸売型の最大の強みは、幅広い販売ネットワークです。自社が売り込むのではなく、顧客である販売店がエンドユーザーである製造業に営業するために、短期間で全国、全世界に販促することができます。その規模とスピード感が卸売の強みになります。その上で、販売店型から見た場合の卸売型から仕入れる価値が、展示会などの付加価値要素になります。自社での展示会を開催して販売店やエンドユーザーを呼び込みビジネスに繋げます。詳しくは、下記記事の山善の項目で説明しています。

・海外でのアフターサービス、販促
工作機械メーカーの海外での販促や現地でのアフターサービスを担っている場合もあります。機械は故障の修理を迅速に行う必要があるため、アフターサービスが非常に重要です。海外までアフターサービス拠点を出せないメーカーや場所で商社が行うことで、顧客・エンドユーザーに対して価値を提供しています。

・金銭的リスクを請け負う

機械メーカーは商品が高額なために販売後の代金回収まで正確に期日通り行う必要があります。機械を作る上での購入部品は先に支払いを行うため、極端に言えば代金が正確に回収できなければ現金がなくなってしまいます。しかし全国・全世界様々な顧客に対して機械を販売していると代金の回収を管理する手間とリスクが発生してしまいます。そのため卸売型の機械商社を通して、販売する形をとっています。顧客(販売店型機械商社)からしてもよく取引をする卸売型が窓口であれば信用ができます。そのため仕入れ先の機械メーカー、顧客の両者に対して金融的役割を担うことで価値を出しています。

販売店型の機械商社が与える価値

別記事でも解説しましたが、販売店型の機械商社は、実際に設備を使用するエンドユーザーである製造業に営業します。

先述の「・金銭的リスクを請け負う」という役割は同じです。

先述の海外でのアフターサービスを販売店型の機械商社で行っている企業もあります。

その他の提供価値を紹介します。

・プロジェクト管理
1台口でも複数台の新ライン案件であっても、正確なプロジェクト管理が求められます。納期に遅れがないか、問題がある場合はどのように解決するかなど、機械メーカーと顧客の間に入りプロジェクトを動かします。顧客からしても複数台導入する場合、商社に一任できるので価値があります。

・自動化のシステムアップ、エンジニアリング
ロボットでの自動化などは、ユーザー側の工場や製品ごとにオーダーメイドの仕様が必要となります。ユーザーに合う形にカスタマイズするエンジニアリング部隊を所有している商社も多いです。商社にその部門がない場合は、得意な装置(システム)メーカーを仲介します。

・提案力
当たり前でもありますが、商社は多様なユーザーと取引をしていて取り扱い商品に対する情報量が多いことが強みです。顧客が今まで導入したことがない設備の選定や自動化できるかわからないことの検討など、顧客の課題を解決するために提案することも商社の価値となります。

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産業機器・機構部品の販売方法やビジネスモデル

工作機械や産業機械は様々な機器・部品から構成されています。そのような機械に組み込まれている機器・部品をメインに取り扱っている商社もあります。具体的には、集塵機やポンプ、温調機器などの産業機器、モーターやボールねじ、ガイド、コンベアなどものを動かす駆動部品、油圧や空圧機器、センサなどものを制御する制御機器など様々なものがあります。

産業機器の画像
機械に組み込まれる様々な産業機器

☆特徴☆

・継続的、定量的に取引を行い、在庫や納期管理、カスタマイズが求められる。
顧客は、工作機械や産業機械、プラント設備メーカーなど機械メーカーになります。機械を構成する機器・部品類は購入品の場合がほとんどですので、機械メーカーはそれらを産業機器商社から調達します。機械との違いは、より継続的に一定数の取引が行われることです。そのため安定した売上を期待できますが、短納期かつ正確な納期・在庫管理が求められます。
営業としては、ルート営業がメインとなり、顧客が求めるものの供給体制を常に確認することが求められます。

機器・機構部品のビジネスモデル

モノ(What)メーカー例(What)顧客(Who)/顧客の職種機械商社の例
産業機器(集塵機,ロボット,ポンプ,パーツフィーダー,温調機器など)アマノ,安川電機など工作機械・産業機械メーカー/調達・購買・設計
プラント設備メーカー/調達・購買・設計
販売店型商社/営業
日伝,ユアサ商事
駆動機器部品
(モーター,コンベア,減速機,ボールねじ,リニアガイド,ベアリング)
三菱電機,椿本工業,THK,NTNなど工作機械・産業機械メーカー/調達・購買・設計,
装置・プラント設備メーカー/調達・購買・設計
三菱系商社,椿本興業,
制御機器部品(油圧・空圧機器,センサー,シリンダー)SMC,CKD,不二越,オムロンなど工作機械・産業機械メーカー/調達・購買・設計,装置プ・ラント設備メーカー/調達・購買・設計日伝,鳥羽洋光

産業機器・機構部品の商社が与える価値

・販売台数による価格交渉力
機械本体の卸売型と同じく、販売台数による価格交渉力があります。顧客1社において継続的に、定量的に取引を行うために、より価格メリットが大切になります。そのルートだけの特別価格などを提示することも商社の価値となります。そのような関係を構築することで顧客にも価格や他を探す手間が省けるメリットがあり、競合他社の参入を防ぐことができます。

・在庫などによる即納体制
産業機器類の特徴としては、“すぐに”、”一定量”欲しいという要望が多いです。機械メーカー側も機械を受注 → 正式設計 → 必要な機器類が確定・発注 という流れが一般的で、機器類が入らなければ機械を組み上げられないため、短納期が求められます。そのためよく出る型式や、後でカスタマイズが可能な状態で機器類を在庫しておき、顧客の短納期要望に答えています。引合時、見積時にすぐに納期回答ができるような自社システムや他社とのネットワークを構築しておくことが重要となります。

・顧客に合わせたカスタマイズ
上記でも少し触れましたが、自社内に顧客に合わせてカスタマイズできる体制を取ることで価値を提供している商社も多いです。例えば、ポンプユニットなどユニットにして販売される機器類は、配管など細かい部分は顧客毎にカスタマイズが必要になることが多いです。仕入れ先からは標準仕様の低価格に調達をして、自社で特殊仕様にカスタマイズすることで利幅を大きくします。

・海外代替品の調達
台湾製や韓国製、中国製の同等のものを輸入販売することで、顧客(機械メーカー)に対して、低価格な機器類の調達を実現します。また2018年に非常にものづくり業界が活況でボールねじやリニアガイドなどが全く手に入らない時に納期の関係で台湾製のメーカーに代替して、そのまま台湾製を使い続けているところも多いです。品質のリスクは伴いますが、台湾製や中国製の品質も品質も向上していることや、あまり品質管理が簡単な部品のみ海外から調達するなどして価値を提供しています。


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工具・消耗品の販売方法やビジネスモデル

ドリル、チップなどの切削工具の商社は、機械本体と同じく卸売型と販売店型があります。違いは低価格な消耗品で常に使用し続けるため継続的な取引が一般的です。工具メーカーからすると、数本から新しい取引先に販売していると管理ができないため、卸売商社が入ることで管理業務を委託 できます。またエンドユーザー(製造業)からしても、毎日のように来てくれる販売店の営業に頼む方が手間がかかりません。

切削工具も基本的にエンドユーザーに対して、どの工具メーカーの工具はどの商社から販売するかのルートが決まっています。そのルートを守るためにもユーザーごとの特別価格を決めている場合もあります。
販売店型の商社は、地域に根ざしたところが多く、毎日のように顧客(製造業)に顔を出します。現場の製造担当者や班長、中小企業であれば経営陣に合うことで、加工現場での課題を聞いて、適する商品を提案します。

旋盤のホルダとチップの画像
旋盤のホルダとチップ
マシニングセンタに使われるドリルの画像
マシニングセンタに使われるドリル

工具・消耗品のビジネスモデル

モノ(What)メーカー例(What)顧客(Who)/顧客の職種機械商社の例
切削工具住友電気工業,三菱マテリアル,
サンドビック,タンガロイ,大昭和精機など
販売店(工具商社)/営業
製造業/製造,現場の作業者
Cominix,杉本商事,山善,NaITO,トミタ

工具商社の提供する価値

基本的に機械本体の卸売型と同じです。卸売型の商社は、山善やユアサ商事など機械部門と工具部門のどちらもある場合がほとんどです。工具専門の商社でも、卸売型を行っていても、自社やグループ会社でエンドユーザーに販売している販売店型も行っているところが多いです。

・在庫、即納対応
工具は消耗品で常に使い続けるため、常に即納が求められます。実際には製造するのに1週間~数ヶ月かかるものもありますが、基本的に短納期が求められます。そのため得意先でよく出る品種や得意なメーカーの品種のものは自社で在庫している場合が多いです。または卸売型が在庫している場合が多いです。

・加工現場の頼りになる存在
先述の通り毎日のように顧客(販売店やエンドユーザー)に顔を出すことが多いです。そのため信頼されると、顧客から困ったことをなんでも相談されるようになり、様々なネットワークから対応することで価値を提供できます。例えば、切削工具を販売している商社は、部品加工の請負も行います。顧客から部品の加工を依頼された場合、自社の別の顧客で加工できるところに依頼することで、別の顧客に仕事を回すこともできます。大抵は、低価格・低利益な切削工具で取引を継続しておき、たまに特殊対応で利益を上げることもできます。顧客としては自分の手間が減るため、毎日来てくれる工具商社に依頼する価値があります。

・提案力
切削工具や部品加工などはEC化が進んできている分野ですので、顧客にあった提案が必要になります。言われたものを届けるだけでなく、顧客の利益が上がるようなソリューション提案をしていくことが工具商社にも求められます。

・海外代替品の調達
機器類と同じく海外の同等品を調達して、顧客の工具費を削減することも価値の一つです。既存ルートは決まっていても海外製品は決まっていないことがあるので、新規開拓手法にもなります。


工場用品の販売方法とビジネスモデル

工場用品はコーナンなど、ホームセンターで売っているような様々な工場や作業者が使う用具の商社です。完全な消耗品ではないため、多品種のものを必要な時にすぐに提供することが求められます。工場用品だけを訪問営業をしている商社はなく、トラスコ中山に代表されるよう自社で倉庫をもちECサイトやカタログでの販売を行なっている企業が該当します。

商社というよりも小売・流通業という方が理解しやすいかもしれません。倉庫や在庫管理、効率の良い物流業務が求められます。

工場用品のビジネスモデル

モノ(What)メーカー例(What)顧客(Who)/顧客の職種機械商社の例
工場用品(ドライバーなどの消耗しない工具,安全器具,環境改善品,測定機器など)トラスコ中山、他それぞれの工場用品メーカー販売店(工具商社)/営業
製造業/製造,現場の作業者
トラスコ中山,ミスミ,MonotaRO,

工場用品商社の提供する価値

・必要な時に必要なものをすぐに届ける
上記でも説明した通り、ECサイトや在庫管理、物流業務などを通して、必要な時に、必要なものをすぐに届けることが重視されます。そのため顧客が使いやすい(モノを探しやすく、発注しやすく、安い)販売チャネルの提供(ECサイトなど)、正確な在庫管理による迅速に納品することで価値を提供しています。

以上、機械工具商社の製品ごとのビジネスモデルの違いを簡単に解説いたしました。何か参考になれれば幸いです。

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