機械・工具商社での営業。工場全てがターゲットとなりうるため、新規開拓をする際にどのように営業をかけるところを探せば良いのかわかりにくいと思います。そこで今回はネットやネット以外の方法も含めて新規開拓先を探す方法を紹介します。
新規開拓にはアプローチ数(量)が必要
今までに関係性がないユーザーに対して、仕様打合せやアフターサービスが大切となる高額な機械を購入いただくことは一筋縄ではいきません。信頼関係ができた上で、今までの取引先よりも大きなメリットを感じてもらう必要があります。
そのために提案の質を上げることももちろん重要ですが、量も重要になります。特にまだあまり機械や仕事内容がわかっていない新入社員や若手社員は量が必要になります!
新規開拓数は下記のような式になります。
新規開拓数 = アプローチ数(量) x 提案内容(質)
今回はこの量の部分であるアプローチ数、その中でもターゲット企業の探し方を紹介したいと思います。
機械商社の営業における有効な新規開拓先の探し方
事務所でできる方法
・リスト、工場マップなどを買う。 ・新聞、ニュースをみる。(日刊工業新聞、日刊産業新聞、twitter) ・補助金採択企業をみる。 ・「取引先」で検索する。(得意先・地元の主要企業) ・過去のユーザーを洗い出す。
現場(営業先や外回り)でできる方法
・紹介してもらう。(ユーザー、メーカー) ・工業団地をめぐる。近くの企業を探す。 ・切粉を見る、プレス音を聞く。 ・取引先を聞く。調達先や通い箱を見る。
工場リスト、工場マップなどを買う。
最も早く新規開拓リスト内のユーザー数を増やすことができる方法です。最近ではネットでリストが販売されています。少数であれば無料で見ることができます。さらに紙媒体やデータベースでも販売されています。
一番初めはそれらのリストを購入して該当しそうなユーザーをピックアップすることが、効率よく数を増やすことができます。
おすすめの企業リストサイト:
Baseconnect
業界や地域はもちろん従業員数など様々な項目で検索ができます。別サイトのMusubuにて情報データベースを管理。掲載企業も100万社以上とデータベースが大きいことも魅力。検索結果の1ページ目は無料で見ることができます。
エミダス
製造業・工場向けネットワークサービスを行なっているNCネットワークが運営する工場検索サイト。細かな業界毎に検索できることはもちろん、各企業の所有設備なども載っていてより詳細な情報を得ることができる。中小企業中心に掲載されている。
JETRO
海外進出工場を探したい場合はJETROのHPにリストが載っています。上記2サイトと比較してリスト検索が目的のサイトではないため、少し検索性は悪く見にくいですが、進出企業や工業団地を調べることができます。
新聞、ニュースをみる。(日刊工業新聞、日刊産業新聞、twitter)
日々の産業ニュース、工業ニュースをみて企業を知ることもできます。企業名を知るだけでなく、産業界の最新ニュースや流れを把握できます。
また日刊工業新聞や日刊産業新聞では中小から大手まで様々な企業の新工場情報・設備投資情報も載っています。新工場建設の記事が出ている時点で大きな設備投資は決定していることが多いですが、たまにまだ設備投資の詳細が決まっていない場合もあります。そもそも新工場を建設するほど景気の良い企業であることは違いないため、ダメ元でも連絡してみれば関係構築に繋がる場合もあります。
私も海外での新工場建設の記事を見てすぐに飛び込みで営業をかけたお客様と取引に繋がったことが過去に2件ありました。
ニュースイッチ
日刊工業新聞の記事をわかりやすく紹介してくれるサイトです。無料で見ることができるので、非常に重宝しています。
補助金採択企業をみる。
ものづくり補助金や2021年では事業再構築補助金、省エネ補助金など設備投資に関する補助金は様々あります。それらは採択企業発表後、経産省関連の補助金のHPに採択内容とともにリストが掲示されます。そのリストを見ることで、どのような企業がどのような事業で採択されている(投資している)かがわかります。
補助金の案件自体は申請時に機械が決まっているためリストを見てからでは遅いですが、積極的に投資をしている企業、及び最新の投資内容を把握できるためリストを見ることはお勧めします。
ものづくり補助金採択結果
「取引先」で検索する。(得意先・地元の主要企業)
自社と既に取引がある得意先や営業エリアの大手企業の取引先を調べることも効果があります。大手企業の場合、仕事を外注していることも多く下請け先(取引先)機械も多数所有している場合があります。
また機械商社で既に取引がある企業と繋がりがある企業は、相手も信頼しやすいため営業訪問もしやすく取引開拓に繋がりやすいです。
大手企業の場合は城下町のように地元に根付いて、周辺の企業に仕事を出していることも多く取引が繋がっていることも多いです。営業するエリアのビジネス・ものづくりの流れを把握することで営業活動にも生かすことができるためエリア内にどのような大手企業がありどのような企業に仕事を出しているかを調べることは重要です。
取引先の調べ方
①検索
HPなどに取引先を書いている企業もあるため、HPの会社概要を見ることや、「◯◯ 取引先」と検索すると出てくることも多いです。
②訪問時に情報を得る。
訪問時に掲示板に貼ってある調達先リストやロッカー(よく取引のある企業の書類を入れるロッカー)の企業名をみたりすることで取引先を知ることができます。また通い箱(ものを搬送する時に入れる箱)に書かれている企業も取引をしている企業になります。
紹介してもらう。(ユーザー、メーカー)
ユーザーからの紹介
最も取引に繋がりやすい方法です。ただし既に信頼関係があるか、こちらから何かメリットを与えていなければ紹介してもらえないためハードルは高いです。
ただ真摯に向き合って仕事をしていればユーザーから紹介してもらうこともありますので、紹介を依頼するというよりは日々のユーザーの担当者に向き合うことが重要です。
私も仲良くさせてもらっている町工場の社長から3社紹介してもらい、内2社は新規の取引に繋がりました。紹介いただいた人も信頼できる社長からの紹介のため初めからこちらへの不信感を持たずに接してくれます。
メーカーからの紹介
メーカーも直接問い合わせをもらったユーザーに対して、与信や営業対応の関係から商社を通す場合があります。メーカー側も信頼できる人でないと紹介できないため、そのメーカーのものをよく売っていたり、それまでの信頼関係がある人を紹介します。
普段からメーカーの人とも関係を構築しておくことが重要です。単に仲良くなるのではなく、困っていることを助け合うなどビジネスで関係を築くことが重要です。
私も年に1,2社はメーカーからの紹介で取引開設に繋がっています。紹介された後、自分でも訪問して自社が間に入るメリット、メーカーの商品以外の商品(競合はNG)を紹介することで接点を増やして、様々な取引に繋げることができます。
工業団地をめぐる。地方の企業を探す。
工業団地などの企業を訪問する際は、その近くの企業を実際に車や徒歩で回ってみることをお勧めします。ネットに載っていない企業があったり、新しい工場を立てている企業があったりと生の情報を得ることができます。
また商社もメーカー拠点も利便性を考えて都市部になるほど多い傾向があり、地方になればなるほど競合も少なくなります。その割に地方に非常に景気の良い製造業はたくさんあります。そのため山奥などであっても接点があれば積極的に営業活動をすべきです。
競合が少ない分、様々な情報を持っていくだけで喜んでいただけるユーザーも多いです!
切粉を見る、プレス音を聞く。
工場の外を見ているだけも開拓先を見つけることはできます。例えば切粉がたくさん出ていれば切削加工、ガシャーンガシャーンというプレス音が聞こえてくればプレス加工をしていると考えて機械を保有していること、仕事があって機械が稼働していることがわかります。建屋が新しくて綺麗かどうかも含めてそれらの外から見る情報だけでもユーザーを見つけることができます。
訪問した企業も事務所にだけ行くのではなく、事前に工場の外の様子を伺いどのような加工をしているかを想像して事務所に行くことでより具体的な提案ができるようになります。
過去のユーザーを洗い出す
機械商社はある程度、創業から月日が立っているところが多いと思います。40年ほど前の高度経済成長期のものを作れば売れた時代には尚更機械をたくさん販売していたと思います。しかしそこから途切れてしまっているユーザーも多数あると思いますので、過去の実績あるユーザーを訪問してみると老朽化更新や自動化などの引合をいただけることも多いです。たまに社長や二代目の社長が社名だけ覚えてくれていたりします。
私もこのやり方で5社、数十年ぶりに取引を行なった企業がありました。
まとめ
機械商社の営業として新規開拓のターゲット先を探す方法を紹介しました。新規に取引を広げるにはまずアプローチをするターゲットユーザーを知ることから始めると思います。その際には単純に今まであるリストや工場マップだけを使うのではなく、今回紹介した様々な方法でターゲットユーザー数を増やすことで開拓できる確率を上げることができます。
新規開拓はどれだけ商品力があっても100%はなく、訪問して関係を構築していく期間が必要になります。その時に少しでも訪問できる数を増やすため様々な角度からターゲット先を増やすことは重要です。それらの参考になれれば幸いです。