2022年版 工作機械商社の業界研究 代表企業の特徴や今後の注力分野

機械商社 業界研究・就活
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こんにちは。今回はなかなかわかりにくい機械商社・工作機械業界に関して広く浅く紹介したいと思います。主に就活生を対象にしています。「機械商社業界ってどんな企業があるの?」、「商社不要論もあるけど、将来性はあるの?」といった疑問に対する参考になればと思います。

就活サイトなどで業績や平均年収などのような情報はよく出ているので、業界内で働いているからこそわかる生の情報をもとに簡単に解説します。

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機械商社とは

機械商社とは、金属を削る工作機械など工場で使用される設備を取り扱う商社です。機械商社の種類や仕事内容に関しては、下記記事にまとめています。また機械の販売形態も大きく分けて「卸売総合型」と「販売店型」の違いがあるのですが、それらもまとめています。

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機械商社業界の特徴

景気に左右されやすく、現状は非常に好調

製造業も仕事増える、仕事が計画できるから設備投資を計画します。一度使用しては買い直す消耗品ではなく、数年間使用するもので、高額の投資にもなるため、製造業側も投資を回収できる目処がなければ設備投資に踏み切りません。そのため工作機械業界の業績は製造業の設備投資状況によるため、景気に大きく左右されます。

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2022年5月現在は好調が続いています。EV、5G、半導体関連向けで設備投資が盛んなことにより、工作機械受注額は17ヶ月連続で前年同期比を上回っています。(日本工作機械工業会 受注統計 より)。21年度は過去最高益を出している工作機械メーカー、機械商社も多数存在します。

逆に機械受注額が景気の先行指標とも言われています。受注してから製作をするため、ユーザー側へ納入するまでに受注後数ヶ月〜1年超かかります。そのため機械受注が増えていると数ヶ月後、直近の数年で製造業の仕事が増えているということになるため、景気がよくなると予想されます。

機械に取り付けて使用される工具類(ドリルなど)は消耗品になります。しかし人が生活していく上で必ず必要な食品などと違い、製造業の仕事がなければ工具も使用されないため、ある程度景気に左右されるのは間違いありません。

そのため「景気を良くするにも機械受注が必要、日本の製造業の機械を最新にして競争力を上げる必要がある」との考えから、政府も設備投資に利用できる「ものづくり補助金」を2014年から毎年継続しています。

自動車業界の影響を受けやすく、変革の真っ只中

工作機械は圧倒的に自動車業界で使用されています。機械商社の販売先の7割以上が自動車関連という会社も珍しくないほどです。今までは特に自動車のエンジン部品、ミッション(自動車の速度を変える機構)部品などに使われていました。そのような中、昨今の急速なEV化に伴い急激に需要も変化している状況です。工作機械業界も機械商社も自動車業界のエンジン・ミッションのための投資に支えられていた面もあり、今まさに変革を求められています。現状最高益を出していても今後もEV化に伴う変化に対応することが求めらます。

具体的には、エンジン部品の加工で使用されていたマシニングセンタの受注が減り、EVで使われる部品の加工するためのマシニングセンタやその他加工機、組立機械などの需要に変わります。

機械商社としては、販売先のユーザーの業種や製品、加工内容が代わり、仕入れ先の機械も変わります。今までのネットワークや知識にとらわれずに新たな需要に対応することが求められています。

EVの写真

海外売上比率が高い、商社としては日系の海外工場がメイン

売上高の海外比率も50%を超えている企業も多いです。これは工作機械メーカーや機器類の販売先が海外にも多いということの他に、日系企業の海外工場向けが多いためです。日本の工作機械は高精度な加工ができ、寿命も長いため海外でもよく利用されています。工作機械メーカーによっては海外売上比率が70%を超えているメーカーも珍しくありません。
ただし機械商社としては、海外企業に日本の工作機械を売り込むというよりは、日系製造業の海外工場に機械・工具を販売しています。日本の製造業も海外での地産地消の生産が進んでおり、海外での生産体制を確立しています。機械商社としては海外において、緊急時の機械の修理や立上げのサポート、工具・消耗品の在庫による即納対応など、現地での機械・工具の調達など、海外での生産体制をサポートする役目を担っています。

グローバルのイメージを表す写真

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代表的な機械専門商社

では代表的な機械専門商社と特色、今後の注力分野を簡単に紹介します。上記「機械商社の種類」の記事で紹介した「卸売総合型」の企業が多いイメージで、工具機器類メインの商社も多いです。この機械と工具の販売方法の違いなども今後紹介したいと思います。

機械工具がメインの商社 売上高一覧


概要売上高(21年3月期または2月,20年12月期)(百万)売上高(22年度予想)(百万)営業利益(21年3月期)(百万)売上高・営業利益率(%)売上高の内 機械工具関係に占める割合
山善工作機械・工具商社の最大手。住宅・家庭用設備も取扱い。海外含めた販売ネットワークに強み。434,744500,00011,2342.5861.0%
ユアサ商事工作機械・工具だけでなく、空調・建材関係など幅広い商材を取扱い。山善と同じく海外にも強み。432,185470,0008,9832.0833.3%
岡谷鋼機鉄鋼材料、工作機械の商社。トヨタに鋼材を販売。760,443960,80013,5841.79産業資材
27.4%
トラスコ中山工具、機器類、安全衛生製品など工場の備品・消耗品の商社。流通経路に強み。229,342244,00012,8915.62
第一実業プラント、電子部品、自動車、航空機関係向けに幅広く設備を販売。組立機関連に強み。140,029152,0005,7294.09
菱電商事三菱電機の製品を販売する商社。三菱電機系では最大手。半導体製造装置やFA機器関連、空調関連を取扱い。196,841227,0003,4151.73
ミスミグループ金型部品、FA部品の製造販売。および加工部品、機器類の卸売。ECでの販売に強み。310,719366,16027,1998.75FA事業32.9%
VONA45.6%
MonotaRO工具、機器類など工場消耗品・備品のECでの販売。ものづくり界のAmazon。189,731226,00024,12912.72
東テク空調機器の専門商社。海外拠点増設に注力。109,650111,0006,1765.63
日伝産業機械部品、機器類の商社。減速機などが強み。102,751120,0003,9433.84

山善

概要
工作機械・工具などの「生産財」と、住宅・家庭設備などの「消費財」の専門商社。工作機械・工具商社としては最大手。

特色
・工作機械・工具に関しては、国内では販売店(機械工具商社)に機械・工具を卸す「卸売総合型」、海外では自社拠点を多数持ち直接ユーザーへ販売する形にも注力。

・自社ブランドの展示会
どてらい市」と呼ばれる各地で生産材・消費財を販売する展示会を開催している。都市部だけでなく地方でも開催していることも特徴です。下記記事にユアサ商事主催の「グランドフェア」と同じく、実際に見てみた感想を述べています。

とにかく出展者の熱気がすごく、展示会場限定の特別価格を提示している企業も多いです。このような自社ブランドの展示会を開催することで、機械メーカーやお客さんである販売店(機械工具商社)、ユーザー(製造業)に対して価値を提供しています。

具体的には・・・
機械メーカー   出展することで、自社のPRになり、ユーザーとの接点をもてる。
販売店            ユーザーに機械の実機を見てもらうことができる。
※売る側としては、生産材、特に機械は検討から受注までの足が長い(数ヶ月〜数年)こともあり、具体的な検討タイミングを計ることが重要です。展示会に来るユーザーは、具体的に検討している場合も多いため非常に良い顧客接点となります。
ユーザー         機械はネットや営業マンの説明からだけで情報収集することが難しく、実際に機械を見ることが最も効果的です。様々なメーカーの機械を一度に比較でき、限定価格で購入までできることは大きなメリットです。

・グローバル展開
北米・中国・東南アジアを中心に海外に非常に多くの拠点を持っています。海外でどのような仕事をしているかなどは別記事でまとめたいと思いますが、主には日系製造業の海外拠点でのものづくりのサポート(機械の修理などのアフターサービス)や、日本の機械メーカーの販売代理権を持ち、現地で販促、在庫機の展示・テスト加工などを行なっています。テクニカルセンターに展示場を設けて、現地企業も日系企業も機械の見学やテストが行える状態を整えています。

中期経営計画から今後の注力分野
・国内市場としては、EV市場や三品市場(食品、薬品、化粧品)、農業、航空宇宙市場に注力。戦術しましたが機械商社も工作機械業界も自動車(エンジン)向けの生産材に頼っていた面があるため、どの企業も似たような課題を持っている部分です。

・グローバル展開、中でもインドに注力するようです。また現地でのエンジニアリング機能を整えています。具体的には、機械だけでなく、ロボットを使った自動化など、細かい部分の設備設計を山善でできるような体制をとっています。

・日本国内においても自社のエンジニアリング機能に力は入れているようです。これも機械商社のトレンドの一つですが、人の代わりになるロボットを機械商社でシステムアップする事例が増えています。ロボットは通常ロボット本体だけでは機能せず、ロボットシステムインテグレーターと呼ばれるロボットの動きやハンド、コンベアやカメラなど周辺機器を組み合わせる業者が必要になります。その機能を商社が(グループ会社などで)持つことで、一括で請け負うことができます。

エンジニアリング機能の写真
エンジニアリング機能

ユアサ商事

概要
工作機械や産業機械、空調関係、建材関係と幅広いモノを幅広い業界へ卸売。

特色
・幅広い商品ラインナップ
製造業だけでなく、住環境分野や建築、インフラ・エネルギー関係など幅広い業界との取引がある。売上高の中で工作機械・産業機械関係が占める割合も33.3%と1/3程度。しかし工作機械の取引高としては最も多い

・自社ブランドの展示会
「グランドフェア」を開催している。切削加工機・切削工具を中心に展示。主要工作機械メーカーが最新機種を展示している。「どてらい市」と比べて展示会場のスペースは小さいが、技術的な展示をメインに行なっているイメージ。

今後の注力分野
・海外事業 、北米、南アジア、東アジアに注力。特にタイに注力。
現地のセールス員の強化や現地販売小会社化などを行なっている。ユアサ商事も山善と同じく国内は卸売、海外は直販や販売権を駆使した販促を行なっているイメージがあります。工作機械関係の卸売総合型は主にこの2社がメインではないかと思います。

・ロボット・AI、IoT関係に注力。特に産業用ロボットだけでなく、人がいる場所でも使用でき、AIにより会話もできる協働ロボットに注力。工場ではなく、駅や商業施設への販売を強化している。

eコマース事業にも注力。販売ネットワークを生かして販売店とユーザーをネットで繋ぐシステムにも注力。

・直販にも注力。昨年には販売店型の機械・工具商社を2社買収して大手自動車メーカーや建設機械メーカーへの直接販売を強化している。

トラスコ中山

概要
機械工具・物流機器・安全衛生機器の卸売

特色
・商品カタログ
工場で使用される機器・工具・備品を幅広い商品ラインナップした「オレンジブック」と言うブランドのカタログ。オレンジブックはどの製造業にも1冊以上ある。仕入れ先は国内3,000社以上、海外300社以上。自社ブランド製品も多数掲載。幅広い販売実績から自社ブランド製品の製作が可能。今売れている製品を自社で安く製作して販売するという手法ができる。

・流通機能
全国・全世界に物流倉庫も多数所持。幅広い製品の即納対応をしている。ユーザーや機械工具の販売店だけでなくホームセンターなどにもおろしている。

・MROストッカーという置き薬式の工具販売をしている。ユーザーの工場に工具棚を置き、いつでも使いたい時にすぐに使えるようにしている。使用した分だけの請求となるため、ユーザーは在庫リスクを持たずに、本当の即納が可能となる。ネット経由にしても、電話にしてもいちいち注文するのがめんどくさいものに関しては非常に便利だと思われる。

ミスミグループ

概要
金型部品、FA機器部品を製造するメーカー機能とVONAという産業資材・生産材のECサイトを運営。
特色
・部品を製造するメーカー機能と即日で部品を届ける流通(商社)機能を有する。

・多彩なラインナップの速達ECサイト VONA
商品ラインナップは80垓(億→兆→京→垓)にも及ぶ。いわばものづくり界のAmazonのようなイメージ。1つでも必要なものを即日で届けることができる。業界の人でなければなかなかわかり辛いかもしれませんが、様々な”部品”を必要なときに必要なものをすぐに届けることは非常に難しいのが事実。

・加工部品自動見積システム
Meviyという3D図面を入れると自動で見積、発注ができるサイトを運営。自動で見積、発注後にも完全自動化された自社工場にて加工→出荷までが自動でできる。非常に画期的なシステムでAIを搭載していてデータを分析、自動で学習できるので、今後はより精度の高い自動見積が出来上がっていく。

従来  加工部品が必要なとき・・・
①ユーザーが図面をかく   → ②加工業者、商社へ見積依頼  →  ③加工業者が見積  →  ④金額が合えば発注(合わなければ②へ戻る)  →  ⑤加工  →  ⑥納品
①〜⑥の工程をしなければならず、他社と電話やFAX、メールにて何度もやりとりが必要でユーザーの手間がかかっていました。②で依頼してもすぐに回答が来ない場合や、④で金額が合わずに他を探す場合など、ユーザー以外の部分で非常に時間を取られていました。

Meviyの場合・・・
①3D図面をMeviyに登録する  →  ②自動で見積が返ってくる。  → ③発注する  →  ④加工  →  ⑤納品
①②③までが瞬時にできることで、ユーザー以外の部分で時間を取られることがなくなりました。加工業者側も見積をしても受注できないということがなくなりました。

このようにMeviyは、VONAと同じく業界にとって画期的なシステムです。ミスミグループはこのようにメーカー機能と流通機能があることを活かして、世の中に画期的なシステムを構築してきたことが大きな強みです。

※Meviyと似たサイトでCADDiというサイト(企業)もあります。こちらは昨今最注目の新興企業で、従業員数も何百人単位で採用している企業です。Meviyと同じく業界で今後利用が増えていくと思われます。

https://caddi.jp/

第一実業

概要
エネルギー・化学プラント向け設備、電子部品の実装機、樹脂成形機、組立設備、電池関連設備などの販売

特色
・切削加工機ではなく、電子部品や樹脂系、組立設備がメイン。EV関連向けでリチウムイオン電池製造装置が好調。主要取引先はPrime Planet Energy&Solutions(トヨタとパナソニックの合弁会社)。今後もEV関連設備に注力すると思われる。

・EV関係だけでなく、電子部品の実装機などが好調で21年度は最高益の予定。

・幅広いグローバルネットワーク 北米、欧州、アジア、インドなど。プラント系があるため機械商社では珍しく中東や欧州に多い。

今後注力される分野のまとめ

主要な機械商社・流通業者を数社紹介しました。注力している分野をまとめます。

工作機械は自動車→EV市場
上記「機械商社業界の特徴」でも記述しましたが、工作機械・産業機械など設備本体に関しては、自動車のエンジン加工ラインからEV市場への転換が今後数年の再注力市場になると思われます。エンジン加工ラインで使用されていたマシニングセンタなどの切削加工機だけでなく、組立機械や検査機械など新たな設備の販売に注力しています。

特に海外でもエンジニアリング
ロボットシステムなど、エンジニアリング機能を自社で所有し、商社機能だけでなく自動化設備を製作するメーカー機能、中でも単純な決まった設備の製作ではなく、ユーザーに合わせたエンジニアリング機能に注力しています。

工具・機器・部品加工ではEコマースの加速
特に工具・機器類、部品加工関係ではEコマースの活用が加速されます。ミスミやMonotaROなどに代表されるように、ECサイトでの受発注システムは既に確立されています。これらはより複雑な加工部品などもECサイトでの受発注ができるようになると思われます。また、各工具の卸売型商社では、既存の取引先との電子発注システムを構築したり、より多様な商品をECサイトで購入できるようなシステムの構築に注力しています。機械・工具商社としてはネットワークと流通量から、そのようなECサイトを構築することでユーザー、仕入先メーカー、商社の3社にメリットを提供できます。

以上、機械商社業界と代表企業の特徴、注力分野を簡単にまとめました。まだまだ紹介できていない優良企業なども多数あります。今回は長くなってしまいましたので、また別記事で機械商社の将来性や不要論などについても考えを紹介したいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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