こんにちは。以前、「文系でもものづくりを一から学べる本」を紹介しましたが、今回は機械商社の営業としての仕事を学べる本を3冊紹介したいと思います。
営業といっても業界や商材で業務内容は大きく違うと思います。単なるビジネススキルやコミュニケーションスキル、営業マンの極意といったものではなく、機械商社で7年以上営業をしている経験から“機械商社の営業業務”の理解に役立った本を紹介します。
機械商社の営業の特徴
・意思決定者が複数いて実績など客観的・論理的な説明が必要。
設備投資は会社の将来を反映する投資になるため意思決定者が複数います。担当者の好き嫌いで決定することはなく、複数社の製品を比較した上で論理的に必要なものを選定されます。実績やデモなどを通して実際にできたかどうかなど客観的にメリットがわかる必要があります。
・受注までのスパンが長く、信頼関係が必要。
一度購入すると数年〜数十年は使用するため、選定にも時間をかけて慎重に選びます。話が出てから購入するまで半年〜数年かかることが一般的です。また購入後のアフターサービスも重視されるため、信頼関係を構築していなければ購入してもらえません。
・細かいヒアリング、課題にあった提案が必要。
機械は作る製品や生産ラインによって様々な仕様が求められるため、ヒアリングを通してユーザーが何を求めているかを明確に把握する必要があります。ユーザーの課題を把握した上で、最適な提案が求められます。
今回はこれらの特徴を踏まえて機械を製造業に営業する上で役に立った本を紹介します。機械商社に入社したての若手や、他業界から転職してきた方の参考になれれば幸いです。
商社マンは今日も踊る
小田ビンチ 著
内容/参考になる点
専門商社に入社したての若手の奮闘を描いた漫画です。日々の業務の様子が1話1話短編毎にストーリーと合わせて描かれているため、業務イメージがしやすく専門商社の具体的な仕事を理解できます。ユーザー(顧客)への営業活動やメーカーとのやり取り、各立ち位置(商社の若手は弱い立場ということがよくわかります)、お金をもらうこと、競合との争い、上司先輩のキャラややり取り、全てが私の仕事にもそっくりだったため、非常におもしろおかしく読めました。私も毎年新入社員に勧めています。
私の経験で役立った点
私の場合は2年目か3年目の時に読みましたが、実際に働いてみて感じていた商社の若手営業立場の低さが書かれており、どこも同じなのかと安心しました。笑 後輩ができた時も1年目の早いうちに渡して読んでもらうと楽しみながら、仕事の流れ、商社の立ち位置を大まかに理解してもらえました。 またプラスチック材料の専門商社の話なので、業界も同じで取引先も機械商社と似ている点も参考になりました。
まさに機械商社・専門商社の仕事をイメージするには最適の本です。大手総合商社の説明会を聞いて“商社”に憧れる就職活動生(私もその一人)が読むと具体的な仕事のイメージができて非常に参考になると思いました。
良い点:機械商社での実際の業務をイメージできる。漫画のためわかりやすい。 おすすめな人:機械(専門)商社の若手、新入社員。商社志望の就活生。
元キーエンスのトップセールスが教える 誰でも売れる「プロセス思考」営業術
藤岡晋 著
内容/参考になる点
機械商社の営業をする上で間違いなく最も参考にさせていただいている本です。業界トップのキーエンス出身者が設備機器の法人営業ノウハウを一から説明しています。具体例を交えながら、自分がどのように営業目標を達成してトップセールスマンになったかが丁寧に解説されています。製造業相手の法人営業プロセスを細かく分解して、それぞれでどのような行動をとれば良いかを明確にわかりやすく解説されています。
ターゲット企業、誰に会うか、アプローチ法、クロージング法、またそれらの計画をどのように立てるかに関して数値目標や具体的な基準・方法とともに書かれています。
私の経験で役立った点
ここに書かれている営業手法を実践して、自分の営業プロセスを管理できるようになりました。具体的にはユーザーリスト、営業計画・実績を細分化して分析することで"受動的ではなく能動的に”アプローチする件数や、既存顧客ではなく新規顧客に対してのアプローチ数を具体的な目標に掲げるようになりました。 そして日々の行動で表せられるような細分化された目標を数値で見える化することで、新規顧客へのアプローチ数を増やすことができました。また訪問時の本質を探る質問により商談の確率・優先度を把握・管理できるようになりました。 それらを通して具体的な行動を目標におき、数値で毎月振り返ることにより営業活動を改善することができました。完全に新規のお客さんと面談する回数が、管理し始めた頃よりも5ヶ月後には倍以上(12→26件)になりました。またその効果もあり、2019年度には新規開拓件数で全国トップになれました。
この本を参考に、ユーザーリストに新規顧客と既存顧客毎のアプローチ数の目標やユーザー毎に提案する内容と結果の具体的な目標を記載しました。
それらの一部を紹介します!!
ユーザーリストに追加したそれぞれの細分化した目標値(実際は金額目標も記入)
このように月毎に記入していきます。
ユーザー毎にもどのような提案をするか、どのような価値を与えることができるか、キーマンの度合い(数値)を記入することで優先順位をつけて具体的な行動に繋げました。
本自体も読みやすく、機械の法人営業方法が具体的に書かれているため、このようにすぐに実践でき、非常に参考になりました。
良い点:法人営業を詳細なプロセスに分けて具体的な方法を紹介されている点、すぐに実践できる方法が書かれている点。
おすすめな人:機械・設備機器を扱う営業全て、法人営業全て。
機械商社として新規ターゲット先の探し方は下記にまとめています。
法人営業のズバリ★ソリューション
片山和也 著
内容/参考になる点
中小企業向けコンサルティング会社である船井総合研究所の方が、鉄工所など中小製造業向けの法人営業ノウハウを書いた本です。法人営業マンの営業ノウハウというよりも中小製造業のマーケティング手法が書かれているイメージです。
しかし機械商社にとって同じ業界でユーザーにもなる中小製造業がどのような強みを持ち、どのように市場にアプローチするべきかを知ることができるため非常に参考になります。
具体的な手法としては、自社の強みを把握して、ニッチな業界か大手企業のニッチな需要かに特化した課題解決HPにより集客、または川上(設計や開発など技術者)にアプローチするという手法が紹介されています。機械の販売手法が書かれているわけではありませんが、技術者に対するアプローチ法や、強みの見つけ方、伸ばし方、ユーザーにとっての価値に変える方法が具体的に解説されているため、考え方や営業個人のスキルとしても非常に参考になります。
私の経験で役に立った点
私の場合では、製造業であるお客さんの強みを考えるようになり、強みを伸ばすための設備提案ができるようになれました。 例えば、VA/VE提案を行い「研究開発代行」をしたり、技術セミナーを開催したりと、コロナ禍でより広まったような"モノではなくコト売り"の手法が参考になりました。 この本を読んでから単に設備を販売しようとするのではなく、その設備がお客さんのどのような強みを伸ばすことができるか、また作ることができるかを考えて提案できるようになりました。特に中小企業の社長など経営者とより深い話ができるようになりました。
この本を読んでからは単に設備を販売しようとするのではなく、”その設備がユーザーのどのような強みを伸ばす・作ることができるか”を考えて提案できるようになりました。特に中小企業の社長など経営者とより深い話ができるようになりました。
良い点:中小製造業のマーケティングノウハウが学べる点、製造業に対するアプローチ法が解説されている点 おすすめな人:技術者へのアプローチ法・自社の技術的な強みを理解したい人、中小製造業のマーケティングを学びたい人。
まとめ
以上、今回は機械商社の営業としての仕事を理解する上で参考になる本を3点紹介しました。
とにかく仕事内容を簡単に理解したい → 商社マンは今日も踊る 営業の成績を上げたい、具体的なノウハウを知りたい → 誰でも売れる「プロセス思考」営業術 技術者へのアプローチ法や技術的な強みの考え方を知りたい → 法人営業のズバリ★ソリューション
この3冊を読めば、機械商社の営業に関して、製造業の営業に関して実践できるスキルも含めて知ることができると思います。何か参考になれれば幸いです。