工作機械(商社)・営業のコツ 購買プロセス毎の提案方法を事例とともに解説

機械商社 営業
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こんにちは。工作機械や設備の機械は単価が高く、導入検討時間も長いため営業してもすぐに結果(受注)に結びつきません。今日はそんな機械の営業におけるコツ、具体的には顧客の購買プロセス毎の提案方法を具体例とともに紹介します!!

こんな人の参考になります。

「機械を全く知らないのに営業になった。」
「機械が全然売れない!結果が出なくて困ってる…」
「文系なのに機械の営業になってしまった。」 
「商社マンに憧れて機械商社に入社したけど、何をしていいかわからない」
工作機械の1つである円筒研削盤の写真
工作機械の1つ 研削盤

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機械を購入する際の特徴

 機械の販売における特徴は次のようなことが挙げられます。

1.金額が高い。
2.決裁者が一人ではない。
3.決定までに半年〜数年かかる。
4.顧客それぞれの要求仕様を満たす必要がある(顧客毎によって仕様が違う)。

 

顧客にとっても検討の段階によって必要とする情報が変わるため、必要な時に必要な情報を与えることが重要です。そのためユーザーの状況をよく把握して、場合にあった臨機応変な提案営業が求められます!!

 顧客も展示会、ネット検索やSNS等を駆使して必要な情報を集めるため、情報をもって行くだけ、の営業では全く効果がありません。そのためこれから紹介する購買プロセスの⓪課題に気づいていない段階まだ具体化していない段階で、顧客の課題を聞いて解決策を提案することが最も重要となります。闇雲に価格メリットだけを伝えたり、ゴリ押しするだけではなく、プロセスに沿った提案を行う必要があります。

そのためにはその段階でも相談してもらえるような信頼関係、またはそのタイミングでの訪問などの営業活動が重要となります。

機械商社の1日の具体的な仕事内容はこちらの記事を参照下さい。

機械商社・営業の仕事内容

機械商社の営業の特徴や営業方法を改善する本はこちらの記事でも紹介しています。

機械商社営業を知るための本3選

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顧客の機械購買プロセス

顧客の実際の主な購買プロセスは次のような形です。

⓪案件不明確段階         課題が明確ではなく、改善、設備投資の構想(予定)がない。(ただし潜在的に課題はある。)
①案件定義段階自社の課題(生産性向上や新製品の生産方法など)を解決できる方法を探している。どのような方法が良いか情報収集している。(具体化しないことも多く、進展に時間がかかる場合も多い。)
②見積段階メーカーとコンタクトを取り、具体的に仕様の打合せを行い概算見積をとる。
③業者選定段階複数のメーカー、方法で見積、テスト、比較検討してメーカー、機種を選定する。
④社内稟議段階社内稟議をあげて実際に購買する。
顧客の主な購買プロセス

 主にこのような段階に分かれており、それぞれで営業側の提案方法も変わってきます。では具体的に事例とともに見ていきましょう。

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プロセス毎の提案方法と具体例

⓪案件不明確段階(課題が潜在的な段階)

 顧客も自社の課題に気づいていない・または気づいているが改善や更新を考えていない状態です。機械の販売では、この時点でコンタクトできているかどうかがほぼ結果を左右します。案件の具体化、受注までに時間はかかりますが、この時点に巡り会えるよう日々定期的に営業活動をすべきといっても過言ではありません。

この時点で下記のような提案を行い、潜在的な課題を検出、次の①案件定義段階へもっていくことが営業のコツの一つです!

設備投資案件が不明確な段階での提案の写真
案件が不明確な段階での提案が必要

提案方法

・顧客の生産ラインを考えて生産性向上案を提示。(人の作業の自動化や効率化、工程集約等)
・顧客の生産ラインの中から更新や改善が必要な部分を考えて提案。(古い設備やラインのネック機の更新、安全対策など)
・顧客が自社の課題解決のきっかけになるような情報の提供。(市場の最新トレンドや、業界他社情報など)

具体例(ほんの一例を提案します。)

1.手作業で行っている部分の機械化 バリ取りや検査、組立工程など人の手で行っている部分の自動化・機械化の提案。
2.人の作業の自動化  ロボットでの機械への取付、日報や生産進捗管理のITツールの提案等。
3.古い設備の更新  類似機械の最新機種におけるメリットの提案、展示会の提案。
4.安全対策の改善  生産ラインで安全に関わる部分の改善提案。例えば溶接現場におけるヒューム集塵システムの提案等。
5.最新情報の提供  協働ロボットプログラミング自動化ソフト、カーボンニュートラルにおける省エネ設備やCO2削減事例の紹介など業界の最新事例の提供

日々の定期訪問で、こちらから改善事例を提案することで、顧客から引合を聞き出すことができます。またこのタイミングで相談いただくことで、最適な提案を行うことができ、単なる相見積、価格・納期競争を防ぐことができます!!

ギアのバリ取り機の写真
ギアのバリ取り機

①案件定義段階(情報収集段階)

 顧客が自社の課題(生産性向上や新製品の生産方法など)を認識しており、解決できる方法を探している状態です。どのような方法が良いか情報収集しており(具体化しないことも多く、進展に時間がかかる場合も多いです。

上記⓪の課題が潜在的な段階と同じく、この時点で相談してもらい、こちらから提案することが顧客へのメリットを出しやすく、受注率をあげるコツです!!

設備投資の案件定義段階での提案例の写真
案件定義段階での提案例

提案方法

・顧客が考える課題の解決策を有するメーカーを同行してプレゼンする。
・新製品の生産方法・メーカーを紹介する。
・概算見積に最低限必要な情報を顧客から聞き出し、メーカーから概算見積をとる。
・展示会やセミナーの紹介、実機見学やテストなどの情報提供を行う。

具体例

1.メーカー紹介・同行 生産性向上のために自動化を検討している顧客のためにロボットシステムメーカーを同行、要望を聞いてどのようにしたら自動化が可能かを提案
2.新製品の生産方法を紹介 旋盤や研削盤など機械で加工ができるかどうかの検討の場合、図面を確認、メーカーと打合せの上、テスト加工を実施。
3.概算見積 設備の算出のため概算見積が必要な場合、ワーク、工程内容(自動化の範囲や加工箇所)、サイクルタイムなど最低限の情報を聞いてメーカーに伝える。概算見積を提示して、具体的に投資可否を判断できるかを検討。
4.顧客の課題に関わる展示会やセミナーの紹介
 メーカーの工場、実機見学の提案。例えばロボットでの自動化可否を判断するために複数のロボットを見学・触ることができるロボットセンター等の紹介等。

顧客の求めている情報を聞いて、具体化させる情報を提供することを意識する必要があります。設備投資した際の見積が欲しいのか、単純にロボットはどのようなことができるのかが知りたいのか、そもそも新製品をどうやって生産するのがベストなのか等。要望を聞いて、それを具体化させる提案がコツになります。

②見積段階

 顧客がメーカーとコンタクトを取り、具体的に仕様の打合せ、設備の見積をとる段階です。打合せにて要望の擦り合わせを行い、見積を提示します。顧客が要求仕様書を出せる場合は仕様書に従い、出せない(まだそこまで詳細を詰められない)場合はメーカー主導で要望を聞いて見積を提示します。その後最終的には要求仕様書として顧客にまとめてもらう必要があります。

競合他社にも声をかけている場合が多く、顧客も見積など具体的な情報が欲しいため、より迅速な対応、コミュニケーションが求められます。

設備投資における見積段階での提案
見積段階での提案

提案方法

・顧客の具体的な要望を聞いて、メーカー同行、打合せ、見積を提示。
・メーカー毎の特徴をプレゼンする。
・顧客に言われたことだけではなく最適案を提案する。
・要求仕様書がない場合、要望をまとめて仕様書作成に必要な情報を提示する。

具体例

1.メーカー打合せ、見積 マシニングセンタの導入計画を聞いた場合、顧客の加工に適したメーカーを提案、同行打合せの上、見積を提示。既に同メーカーで他社から見積が出ている場合、類似機種のある別のマシニングメーカーを選定。
2.メーカー毎の特徴を紹介 同じマシニングセンタでも、ガイドの構造(角ガイドのため剛性が高い)など機械の作りやこだわり、特徴の説明をして顧客へのメリットを伝える
3.最適案を提案 「◯◯のスペックのマシンングが欲しい」など顧客に言われたことだけでなく、「その場合△△も加工ができるこちらの機種はいかがですか?」、「このメーカーにするとクーラントの配管が工夫されており、切粉の問題も今より改善されますがいかがですか?」といったように最適案を提案する。
4.要求仕様書の作成フォロー 顧客の要望、メーカーの標準仕様、オプションを打合せにて確認、見積や見積仕様書にスペックなども記載することにより、顧客担当者が仕様書を作成しやすい書類・情報を提示。

顧客はなぜそれを要望するのか?を常に考え、コミュニケーションを取ることで、本当の要求を知ることができます。言葉や仕様書から出てこない要求を汲み取って最適案を提案することで、顧客にとってもメリットに繋がります。

言われたことだけを対応して見積している場合はなかなか受注に結びつきません。

③業者選定段階

 顧客が複数のメーカー、方法で見積、テスト、比較検討して担当者・責任者ベースでメーカー、機種を選定する段階です。ほぼ導入は決定しており、複数社の見積内容を合わせて比較検討の上、稟議申請します。価格だけでなく、スペック、仕様対応可否、アフターサービス、納期、現場の使いやすさ等が重要となります。工場・実機見学などで比較する際には現場の実際に使用する方が来られることも多いです。

大体の場合は、担当者が欲しいメーカーは既に1,2社に決まっており、そこを購入できるよう稟議書を作成していく準備をしています。そのためここから参戦した場合は、本当に相見積として価格メリットを提示するだけになってしまう可能性が高いです。

設備投資において何を重視して決定するかの写真
何を重視して決定するかを把握する必要がある。

提案方法

・見積内容に間違いがないかを詳細打合せの上、確認。顧客にとって二番手以降のメーカーであれば、打合せが不十分でオーバースペックとなり、価格が競合より高くなってしまっているということも少なくない。
・競合の情報も探りつつ、顧客が本当に求めていることは何かを深くコミュニケーションをとって確認、解決策を提示する。
・工場・実機見学では、実際の作業者に触ってもらい、操作性を見てもらう。

具体例
1.詳細打合せ 要求仕様書や見積内容を確認の上、メーカーを同行して詳細まで打合せする。
2.本当の要望を再確認 何を重視して判断するか、今はどのメーカーで考えているかを明確に聞く。「価格が同じならどちらを買うか、それはなぜか」を聞くことで何を重視しているかをある程度判断できる。
3.操作性の確認 工場見学に来てもらうときには、作業性を説明できるオペレータを用意しておく。

無理にゴリ押しすることはやめた方がいいと考えています。こちらを購入する意思がなさそうであれば、なぜそう考えているかを聞いて、解決策を練る必要があります。設備の機械は高額なので、ゴリ押しして買ってもらえるものではありません。

現場担当者に操作説明をしている写真
実機見学時には現場作業者に操作説明をしましょう。

④社内稟議段階

 顧客担当者が「◯◯の機械を購入したい。理由は△△…」と社内に稟議申請する段階です。この時点でほぼメーカーは確定しています。あとは稟議を承認する段階で顧客上層部から出てきた質問に答える必要があります。具体的な詳細仕様というよりも、経営的な観点からの質問も多いです。

提案方法

・稟議申請に必要な資料を提示。
・上層部へのプレゼン。

具体例
1.必要資料の提示 最新機種にした場合の省エネ化がわかるランニングコストの比較資料の提示など。
2.プレゼン 必要であれば、顧客担当者とメーカーとともにプレゼンを行う。顧客担当者ともチームとなり、社内を調整しやすいようフォローする。

顧客担当者も稟議申請をした段階で、上層部から思わぬ質問や宿題をもらい案件が停滞することもよくあります。顧客の担当者とチームとなり、社内調整できるよう情報提供することが大切です。

まとめ

 今回は顧客の機械購買プロセスに沿った提案方法を解説しました。細かいところは案件や顧客、状況によっても異なりますが、おおよそこのようなイメージです。
 初めにも書きましたが、顧客も展示会、ネット検索やSNS等を駆使して必要な情報を集めます。そのため⓪課題に気づいていない段階まだ具体化していない段階で、顧客の課題を聞いて解決策を提案することが最も重要となります。そのためにはその段階でも相談してもらえるような信頼関係、またはそのタイミングでの訪問などの営業活動が重要となります。闇雲に価格メリットだけを伝えたり、ゴリ押しするだけではなく、顧客の購買プロセスが今どこなのか、それに対して何を提案することが適切なのかを考える必要があります。

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