機械商社で貿易の仕事はできる?フォワーダー・運送業者と比較した役割職種別の具体的な貿易実務・業務の流れを解説

機械商社 営業
スポンサーリンク

 こんにちは。「”商社”といえば、やっぱり貿易!!」と思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。特に就職活動生で、海外との貿易に関わる仕事をしたいと商社を志望している人も多いと思います。今回は、機械商社では実際にどのような貿易に携わることができるのかを具体的な仕事内容や他業界、他関連会社と比較して紹介したいと思います。

スポンサーリンク

機械商社で行う輸出入取引

機械商社で行う輸出入取引の流れの画像

 機械商社で行う貿易・輸出入取引は、基本的に機械の輸出入、及び機械部品の輸出入です。工作機械を海外の企業(日系の海外法人・工場の場合も多)に販売する際、機械メーカーから海外の指定場所まで届けることが機械商社の役割となります。
 具体的には、機械メーカーが日本の倉庫などに納入した機械を、輸出梱包、輸出通関を行い、手配した船便で使用する国まで届けます。その後条件によっては、輸入通関を行い、現地での輸送、納入、据付作業、立上げ作業まで行います。

 また新しい機械だけでなく、すでに海外工場に納入されている機械の部品などを輸出することもあります。それら輸出の際の船便などの手配や、貿易関連書類の作成、場合によっては輸出許可申請、それらの書類に基づいた輸出入の管理を行います。

 貿易相手は、日系企業の海外現地法人や、海外企業、または自社の海外現地法人となります。

スポンサーリンク

機械輸出時の関連業者

 では機械輸出の際に関わる機械商社以外の企業・業者を紹介します。
次に紹介する業者は、機械を輸出する際に関わる業者の一例となります。実際は、機械商社が入らなかったりする場合もあります。

機械輸出時の関連業社の画像

最終ユーザー: 最終的に機械を納入して使用する場所・企業。
機械メーカー : 輸出する機械や部品を製造しているメーカー。
機械商社: 輸出入のアレンジや納入、アフターサービスを請け負う。船積書類を作成する。
フォワーダー(貨物利用運送事業者): 輸出者(機械商社やメーカー)と輸入者(ユーザー)をつなげる仲介業者。荷主(輸出者)と海運・通関業者や船会社の仲介役となり実務を行う。
海運・通関業者: 船積書類に基づき輸出申告を行う。船を手配する。フォワーダーが兼ねていることも多い。
税関: 船積書類の審査、検査、輸出許可を出す。
港湾倉庫業者:輸出前の機械を梱包、輸出申請するまで保管する倉庫業者。
船会社: 船積、輸送を行う。

その中の機械商社の役割/フォワーダー・通関業者・船会社との違い

上記の中で機械商社はどのような役割があるのでしょうか。

フォワーダーは国際物流において、様々な関連会社の仲介役を果たして、輸出入を行う総合物流業者です。フォワーダーが海運・通関業を兼ねている場合もあり、その場合倉庫や船会社の手配はフォワーダーが行います。フォワーダーは様々なものの輸出入に関する実務手続きを手掛けるのに対し、機械商社は機械の輸出入取引に特化しています。具体的には、工作機械、半導体製造装置など多岐にわたり、それぞれの機械に適した輸送方法や梱包方法を選定し、安全かつ効率的に輸送します。実際には実務手続きは機械商社からフォワーダーに依頼していることが多いですが、機械商社も輸出入手続きのための書類作成や申請を行います。これには、関税の申告や支払い、輸出入許可の取得、保険手続きなどが含まれます。また後述しますが、実際に契約するのは海外の最終ユーザーと機械商社のことが多く、機械自体の契約手続きを行うことも特徴です。
 例えば、ある国への輸出が規制(各規制は経済産業省HP参照 https://www.meti.go.jp/policy/anpo/gaiyou.html)によって制限されている場合、機械商社はその規制に対応するための手続きや書類作成を行います。輸出許可申請が必要な場合は、経産省に申請して輸出許可を取得します。実際の用途や機械の特徴などを把握、申告する際にもフォワーダーは機械のことがわからないため、機械商社がそれらの申告を行う手伝いをします。

輸出者(SHIPPER)と輸入者(CONSIGNEE)とは、機械商社はSHIPPER?

 貿易における書類や運送会社とのやり取りにおいて荷送人(SHIPPER)荷受人(CONSIGNEE)という言葉が出てきます。
 SHIPPERとは荷物を送る送り主のことです。輸出者と売手(SELLER)となることが多いです。一般的に機械の取引においては、機械を販売する機械商社などが、ユーザーと契約してSHIPPERとなり、実際に運送する業者を手配します。
 CONSIGNEEとは荷物を受け取る人(会社)のことです。輸入者や買手(BUYER)となることが一般的です。
 様々なパターンがありますが、一般的に海外に現地法人がある機械商社の場合、下記のような取引になることが多いです。※契約内容によって変わります。

スポンサーリンク

具体的な機械の輸出業務の流れ

受注前・見積時

 通常の国内取引と比較して受注前の見積段階からさまざまな事前準備が必要となります。例えば、機械の海上輸送費や、現地での輸送費、据付費(日本からメーカーの作業者が渡航するのかどうか)、輸出許可が必要な機械かどうかなどを把握する必要があります。また契約の責任範囲を明確にする引き渡し条件(インコタームズ)を決定する必要があります。海外工場のある国の港渡しの条件(CIF条件)が多いですが、その場合の輸出梱包費、輸出通関費、海上輸送費、海上輸送時の保険費を算出します。それらを算出するために貨物の量、サイズ・重量を把握する必要があります。

受注後・必要であれば輸出許可申請

 マシニングセンタなどのNC工作機械は一般的に輸出許可が必要となります。

輸出許可とは、"国際輸出管理レジームにおける合意に基づき、大量破壊兵器やその他の通常兵器の開発等に用いられるおそれが高い特定の機微な貨物や技術については、貨物の輸出や技術の対外提供に先立ち、政府が輸出管理を実施し、懸念のある用途に転用されるおそれがあるかどうかその国の政府が審査を行うこととなっております。"(経済産業省HP参照)というものです。

 事前に機械メーカーから所定の書類を入手した上で、経済産業省に申請します。この申請を怠ったり、輸出許可が必要なものを(知ってても知らずとも)許可なしで輸出してしまった場合、非常に大きなペナルティとなり、場合によっては輸出禁止処分となります。またこれらは機械自体に申請が必要な場合や、機械の付属品やソフトウェア、取扱説明書などの技術が引っかかる場合があります。そのためフォワーダーでは判断ができず、機械や貨物内容に詳しい機械商社が判定、確認、申請を行わなければなりません
※これらの輸出許可が不要なものは、非該当証明書という書類をメーカーから取得するだけで輸出自体はできます。

機械の輸出通関、港湾倉庫の画像

国内出荷→輸出梱包→輸出申請→通関

 国内のメーカーを出荷した後、港の倉庫に搬入します。機械は大きいため、自社の倉庫に入れる機械商社は少なく、直接通関をする港の港湾倉庫業者の倉庫に搬入輸出梱包を行います。
 輸出梱包とは、機械が海上輸送時に揺れてずれたりしないよう固定したり、海水や風で錆びたりしないよう真空パックしたりするものです。これらが不十分な場合、機械が故障したり、錆び付いたりしてしまいます。実際に梱包作業をするのは、倉庫業者となります。
 また一般的に、倉庫で保管したまま輸出通関ができる保税倉庫という倉庫で輸出梱包を行います。保税倉庫は、輸出梱包をした機械の輸出申請を受けて、通関を切れる倉庫になります。

 実際の通関手続きを行うのは、フォワーダーや海運・通関業者です。そのため業者から依頼された書類や情報を提供するということが機械商社の貿易での一般的な業務となります。

船に貨物を積み込んでいる画像

海上輸送→荷揚げ→輸入通関

 通関が終わると船会社の船に積み込み→海上輸送となります。この海上輸送時に何か起きた場合の海上輸送保険に入ることが一般的です。海上輸送を担うのは海運会社です。
 現地の港に着くと荷揚げして港に保管されます。港で輸入通関をして問題がなければ、現地の指定場所に輸送されます。現地の輸送に関しては、現地事情にも精通しており、価格も安い現地の業者が請け負うことが多く、日本の機械商社の範囲外となることが多いです。多くの場合、日系フォワーダーの現地支社が対応することが多いです。そのため、①CIFで納入する国の港まで運ぶ、②港から工場までの輸送の2つに契約を分けることが多いです。
 機械商社としての実業務としては、海上輸送、輸入通関が問題ないかの進捗確認、および現地での豪奢・輸送手段の手配となります。

機械の貿易時の海上輸送の画像

現地輸送→工場納入→据付・試運転

 現地輸送を行い工場に納入します。多くの場合、フォワーダー経由で重量屋を手配するため、フォワーダーが輸入通関→現地輸送→据付まで担うことが多いです。重量屋とは、機械などの重量物の搬送、移設、据付を専門としている運送会社です。危険が伴い、傷を付けられない精密機器の取り扱いのため、納入作業には重量屋が必要になります。

※国内の機械受注から納入までの流れを記載した下記記事の最後部にも重量屋や納入日のスケジュールを記載しています。

https://kikainews.com/nounyumadenonagare/
 機械商社の実作業としては、フォワーダーへの依頼、およびスケジュール管理、重量屋など実際にユーザーの工場で作業する工事の作業申請・VISAなどの許可証の連絡などです。

 据付が終わると、機械を動かす試運転が必要になります。このタイミングで機械メーカーの技術者にきてもらう(よくSuper Viserと呼びます)ことも多いです。複雑な機械はこのメーカー技術者に試運転・立上げまで行ってもらう必要があります。また機械商社によっては現地での技術者を管理している会社もあります。それらの技術者によって据付作業や試運転作業まで行うこともできます。それらの現地でのエンジニアリングサービスを強みとしている機械商社も多いです。

機械商社の職種による貿易に関わる実業務の違い(一例)

営業

 機械商社マンとして主要な役割を果たす営業にとっての貿易実務は、ユーザーとの契約上のやり取り、社内各部署とのコミュニケーションが主となります。ユーザーに見積・契約をする際に、どのような条件で契約を行うかを取り決めます。例えば、引き渡し条件や責任範囲、支払い条件・期日の選定などを行います。また、それらユーザーと取り決めた内容を社内の関係部署と調整します。時にはユーザー担当者が貿易に詳しくない場合は、一から説明したり、貿易担当者とやり取りを行うこともあります。

駐在員

 機械商社で貿易まで請け負う会社は、海外に支社があることが多く、現地の駐在員も非常に重要な役割を果たします。機械商社は主に営業職が駐在する人数が多いです。駐在員は基本的に現地社員のマネジメントや現地の企業との営業的なやり取りがメインですが、貿易の際には輸入通関や現地輸送、据付・試運転作業の責任区分や条件などを取り決めます。またユーザーとの取り決めだけでなく、現地の法律やルールに従って物事を確認進める必要があります。現地法人の貿易担当者や、フォワーダー、場合によっては税関と連絡を取り合ってそれらの確認・連絡作業を行います。駐在員の業務としては、普段の営業やマネジメントも含めて、細かい書類や手続きの確認・やり取りがあります。
 輸入手続きだけでなく、納入・据付作業や納入後のアフターサービスも現地の窓口として担います。日本にしかない機械メーカーの場合、現地で緊急対応できません。機械が故障してライン停止してしまっては大きなトラブルとなりますので、アフターサービスに関してどのように対応するかを事前に決めて連絡、ユーザーも承認しておく必要があります。一部、自社にアフターサービスやエンジニアリングの技術者をおいている機械商社もあります。そのように貿易案件の際も現地での機械納入・ライン立ち上げまでユーザーのことを考えてマネジメントしていく必要があります。実際に海外での機械導入、工場での生産をサポートするマネジメントこそが機械商社駐在員のやりがいでもあります。
 また輸出許可が必要な機械に関しては、納入後も移設(転売など)されていないかを現物を確認する必要があります。

海外営業部

 海外への貿易業務を主とする営業部隊”海外営業部”をおいている機械商社も多いです。主に現地(駐在員や現地代理店、ユーザー)から依頼があった機械・部品の輸出作業や定期的に輸送している定期便の手続き、管理を行っています。定期的に海外に出張して外回り営業をしながら、これらの業務を行っている企業もあります。
 営業のように外回りをして仕事をとってきて、ユーザーと取り決めをして自分で貿易を進めていくということは少ないと思われますが、輸出業務になるため、基本的に英語での見積や船積書類の作成などが必要となります。またトラブル時や緊急時の対応などフォワーダーなどとの迅速で、柔軟なやり取りを求められます。現地のことも理解して行う必要があるため、会議時間や電話などは定時外になってしまうこともあると思われます。しかし多くの場合、東京などの本社勤務で転勤がなく、内勤(会社や家で業務を行う)の場合が多く、「海外や貿易と関わりたい。でも営業職や駐在・転勤は嫌」という人に向いている職種です。通常の営業事務と比べると自分自身の裁量も大きく、海外と関われるという点で人気の職種でもあります。

貿易部・輸出入管理部

 会社によっては上記海外営業部と同じですが、実際のフォワーダーや船会社、通関業者、税関とやり取りする部門です。営業が提出してきた書類関係を確認、管理、および上記社外の業者とのやり取りが主となります。営業はユーザーや仕入れ先メーカーとのやり取りを行いますが、書類の確認や管理まで徹底できないことやフォワーダーとのやり取りまで手が回りません。そのため管理部門で明確に管理する必要があります。この管理が疎かになり、輸出許可が必要なものを申請せずに輸出してしまったりすると、経済産業省から輸出業務自体を禁止されたりするため、非常に重要な役割を担います。この部門も、内勤でありながら、海外や貿易と関わることができる職種で、貿易実務のスキルも身に着く人気の職種です。ただし実際にはトラブル時の迅速な対応など書類だけではないやり取りが必要となります。

まとめ

 以上今回は、貿易における機械商社の役割、他業種との違いや、職種による具体的な業務内容を解説しました。機械商社は、ユーザー(お客様)のビジネスの根幹に関わる生産する状態まで持っていくことが役割となります。そのため単に輸送したら良いのではなく、ユーザーと契約を取り仕切り、海上輸送、現地輸送、納入、立ち上げまで行います。その中で船が遅延する、貨物が壊れている、錆びている、海外工場でコンテナから引き出せない、納入してもなかなか立ち上がらない、といった様々なトラブルが発生します。それらをいかに未然に防ぐか、トラブルが起きても最小限に食いとどめ生産立ち上げまでフォローするか、逐一各関係者とコミュニケーションを取り合いプロジェクト管理に努めるかといったところが機械商社マンの腕の見せ所です。そのため貿易だけでなく、貿易を通じて、日本の製造業のグローバルなものづくりを支えたいという人には向いています。本記事がそのような人や逆に貿易はしたいけど実際商社ってどうなの?と気になる人の参考になっていれば幸いです。

 

タイトルとURLをコピーしました