こんにちは。今回は、文系出身で機械商社の営業をしている私が、ものづくりや機械を学ぶために読んだ本の内、特に参考になった本を紹介したいと思います。
中でも製造業や工場・生産現場全体のことを理解することに役立った本を紹介します。
この記事で得られる情報 ・文系出身者で製造業・ものづくりのことを一から理解する上で参考になる本 ・機械商社の若手や製造業以外で製造業相手に仕事をする人が参考にできる本
そもそも文系であれば製造業の何がわからないのか
そもそも文系出身であると製造業の何がわからないのでしょうか。
私も初めは機械はもちろん製造業に関して全くわからない状態で営業をしていたので、的外れな提案をしたり、お客さんの質問の意味が理解できないことも多く苦労しました。。
そのような経験から、文系の今まで製造業を知らなかった人は、次のようなことがわからないのではないかと考えました。
・製造業・工場の全体図 →「工場のしくみ」、「自動車工場の全て」、「儲かる工場のしくみ」 ・各部署の具体的な役割 →「工場のしくみ」 ・製品に関して(どういうものを作って、どう使われるのか) ・製品を作る工程に関して →「自動車工場の全て」 ・言葉の意味(技術用語や業界用語) ・図面の読み方 ・製造業が持っている課題 →「儲かる工場のしくみ」 ・製造業の人の想い → 「トヨタ生産方式」
製造業には様々な部署、様々な生産工程があるため、全体の中でその人やラインがどのような役割を持っているかという全体像が把握しにくいです。全体像を把握しないまま自社の製品・サービスを提案するため、その製品・サービスがどのような課題を解決して、どのような価値を与えるかが伝わりません。もちろん業界用語や図面の読み方もわからないため技術者と話がスムーズにできず、相手にストレスを与えてしまいます。
そして製造業は従業員も多く、大体の場合話す相手はその人自身のことしかわからないため、他の部署やライン、役割のことは教えてもらえません。そのため製造業の全体像は自分で学んでいかなければ理解しづらいです。
そこで今回は、私が実際に読んで製造業・工場の全体像や具体的な役割に関して学ぶ際に役立った本を紹介したいと思います。これらを読むことで文系の方でも少しでも全体像を把握することができると思います。※また別記事で他のテーマで役に立った本を紹介したいと思います。
イラスト図解 工場のしくみ
松林光男+渡部 弘 編著
内容/参考になる点
工場・製造業の種類、様々な工程でどのような作業があるか、部署毎の役割や、それぞれの業務、他の部署との連携などに関して、イラストも交えながらわかりやすく説明しています。工場に関してや生産管理に関してなどテーマで説明している本はあっても、実際の各業務や部署の役割などを具体的、かつ体型的に説明している本はなかなかないため、製造業・工場を理解するのに非常に参考になりました。
私の経験で役立った点
生産技術や購買、生産管理など初めは理解しにくかった各部署の業務内容・役割を知ることで、営業する相手のこと、さらにはその人たちの全体の中での役割を知ることができました。 例えば、生産技術は新しい製品を作る際、生産ラインの構成を考えて、設備の仕様を決めて、導入することが仕事です。そのため機械商社であれば、生産技術者にPRすべきです。しかし受注の最終段階に至るところで、現場(製造部)や保全の実際に機械を使う、修理する人々が出てきます。その人たちは実際に設備を使うため、操作性や寄り付きやすさを重視されます。そのような部署毎に設備で重視されるところが違うため、この本で根本的な部署毎の役割を把握することで、より適切な提案ができるようになりました。
そのように製造業外の人が製造業の全体像を理解するのに役立つ本だと思います!!
構成としても、各テーマに対してイラストを多く交えながら見開き2ページで解説しているため、気になる部分だけを短時間で読むことができます。さらに各部署の説明では、「入社4年目の生産技術のA氏は上司から◯◯をしろと言われました。実際の仕事を見てみましょう。」といったように具体的な例をあげて紹介しているためイメージやすい構成です。
良い点:製造業・工場の全体像を理解できる。工場の具体的な役割や仕事内容が体系的に説明されている。
おすすめな人:製造業のこと・全体像を初歩から理解したい人、製造業相手に仕事をする文系出身者。
自動車工場の全て
青木幹晴著
トヨタ生産方式
大野 耐一
内容/参考になる点
トヨタで「ものづくりの工程と生産管理」(本文より引用)に長年携わり、中国や韓国でもトヨタ生産方式導入のコンサルティングを行なっている著者が、自動車(トヨタ)の工場を説明した本です。「単にクルマづくりの工程を描いてみました…..ということではなく生産工程と生産管理をリンクさせて説明する」(本文より引用)とあるように、トヨタ式の生産管理方法に合わせて、具体的にどのような工程で、どのような工夫がされているかを説明しています。
イラストも交えながら、各工程ごとにどのような機械・作業があるかトヨタでの工夫も合わせて詳しく説明されているため、自動車工場がどのようになっているかを理解できます。特に工程毎の製品の流れに関して「なぜそのように設計されているか」という理由も含めて重点的に解説されているため、個別の工程というよりも自動車工場の生産管理体制も含めて理解することができます。
元トヨタ自動車副社長の大野耐一さんが書いている「トヨタ生産方式」と合わせて読むと日本のものづくりの象徴でもあるトヨタ生産方式をより理解できます。トヨタの生産管理に関する考え方を「トヨタ生産方式」で理解して、それを実践されている生産ラインの具体例をこの「自動車工場の全て」で深く理解することができます。
私の経験で役立った点
私の場合はあの有名な”かんばん”も「トヨタ生産方式」で概要と理念は理解できましたが、具体的にイメージしにくいところもありました。しかし「自動車工場の全て」で各生産ラインで"かんばん"がどのように機能しているか、動いているかを知ることで、"かんばん"の必要性を理解することができました。"かんばん"を使いにくい工程でも独自のやり方が紹介されており、より具体的なイメージを持つことができました。
実際に自動車の加工ラインではどのような工程・設備があるかも書かれているため、自動車部品メーカーに営業する際に事前にラインをイメージして提案することができました。
良い点:自動車工場(トヨタ)の具体的な生産ラインを理解することができる。
おすすめな人:機械・工具メーカーや商社で働く人、自動車工場と取引をする文系の人、トヨタ生産方式を具体的な例とともに理解したい人。
儲かる工場のしくみ
堀口 敬 著
内容/参考になる点
”利益を出す”という観点から工場の仕組みを説明している本です。利益を上げる工場とはどのような工場なのか、付加価値をあげる、生産性をあげるとはどういうことなのかが体系的に書かれています。普段の営業でも”生産性を上げる”ことを目的に機械の営業していますが、実際にはお客さん(工場)がどうなれば利益が上がるのかを理解できていないまま提案していました。
私に役立った点
この本を読むことで、"生産性を上げる"ことと"利益を上げる"ことをリンクさせて考えることができるようになりました。「生産性を上げる設備が営業相手の利益を上げること」、逆に「利益を上げるためにはどの部分の生産性を上げなければならないか。そのためにどのような設備が必要か」を考えて提案することで、お客さんにも設備の必要性を理解してもらえて、受注できるようになりました。 なぜなら、"生産性を上げる"ことに関しても、作業者の生産速度を上げるのか、稼働率を上げるのか、設備の生産速度を上げるのか、稼働率を上げるのか、稼働率が上がりさえすれば良いのかといったことまで分解されて解説されていました。
“稼働率を上げるべき”、”在庫が悪”ということもよく聞きますが、この本を読んでものづくりを利益の観点から考えることができるようになり、それらの言葉の意味が理解できるようになりました。
良い点:利益の観点からものづくりを解説している点。”生産性を上げる”ことに関して分解して解説されている点。
おすすめな人:工場長や製造業・工場を経営する人、設備を販売・購入する人。
まとめ
今回は製造業の全体像を把握する上で参考になった本を3冊紹介させて頂きました。
製造業の全体像を把握、各部署の役割を把握するには、「イラスト図解 工場のしくみ」 自動車工場や生産ラインの流れを把握するには、「自動車工場の全て」 利益や生産性向上の観点から製造業を把握するには、「儲かる工場のしくみ」
これらの3冊+「トヨタ生産方式」を読むことで製造業の全体像を把握することができると思います。また別の機会に、各テーマや技術的な知識をつけることに役立った本や、ビジネスを理解するのに役立った本などを紹介したいと思います。