2022年最新 NCプログラム作成の自動化とは AIや工作機械のソフトのメリットを課題ごとに比較・紹介

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 様々な精密部品を自動で生産する工作機械。工作機械はNCプログラムにより制御されています。今まではNCプログラミングは人が行うため、その時間や手間がかかっていました。しかしJIMTOF2022年でもNCプログラミングの自動生成ソフトが多数発表されていました。今回はそれらNCプログラミングの自動化に関して、メリットやどのような技術・方法・メーカーがあるかを課題ごとに一から紹介したいと思います。

この記事でわかること

・NCプログラミングの自動化とはどういうことか?
・NCプログラミング作成にはどのような課題があり、どの部分を解決(自動化)できるか。
・対話式プログラム、CAM、 AI自動NCプログラム作成ソフトの違い。
・AI自動NCプログラム作成ソフトメーカーや工作機械メーカーの自動作成ソフト

JIMTOF2022の感想はこちら

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工作機械のプログラミングとは

NCプログラミング

 現代の工作機械のプログラミングはNC装置で行います。NCとはNumerical Contorl(数値制御)の略で、NC装置とは工作機械やロボットを数値で制御する装置です。移動する位置座標、加工工程や動作順序などを数値で制御します。CNCとは、Computerised NCの略で、現代ではNCもCNCも一般的には同義で使われています。

 NC装置により、自動で正確な(位置)精度で、連続した加工が可能となります。また数値(座標)で制御するため、繰り返し精度(同じ動作を繰り返した時の誤差)が高い加工ができます。
汎用機と呼ばれるNC装置がない工作機械は、人の目でみて、手の感覚で作業をする必要があり、連続した動作の繰り返し精度が低いこと、及び人手がかかることが課題です。反面、NC装置はワーク1種1種に対してプログラムを作成しなければ動かないため、保全職場や機械組立職場など多品種少量で簡単な加工だけの部品を必要な時だけ使う場合、汎用機も重宝されています。

 NCプログラムはコード、座標、数値を入力して作成します。コードには、GコードやMコード、よくある加工のコードをまとめた固定サイクルなどがあります。言葉の意味は下記マシニングセンタの記事の3.NC装置の機能やオプション の部分でも簡単に解説しています。

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NCプログラミング自動化とは

NCプログラム作成における課題と解決策

初めにNCプログラミング作成における課題と自動化での解決策を7点紹介した後、具体的に紹介します。

①NCプログラム作成時間がかかる、機械の操作盤で行うとその時間機械が停止してしまう。
→事務所PCでプログラミング、対話式プログラムやCAM、AI自動NCプログラム作成ソフトや機械メーカーのソフトで自動生成することで解決。プログラム作成時間を削減。

②事務所のPCで作成しても、プログラミングに時間が取られる。高度なプログラム作成には技術が必要。
→対話式プログラムやCAM、AI自動NCプログラム作成ソフトや機械メーカーのソフトで解決。プログラム作成工数を削減。

対話式プログラム、CAMの必要性の画像

③加工するためには、素材・工具の情報や加工条件、順序(加工パス)などを設定(選定)する必要がある。順序などは人によって変わってしまう。(経験やコツが必要)
AI自動NCプログラム作成ソフトや機械メーカーのAIソフトで解決。入力・選定の工数削減、人による差の削減。
この部分を自動化できることが昨今のAIソフトのCAMと違うメリットです。CAMでNCプログラムを自動生成しても、この部分は作業者が選択、設定する必要があります

CAMの必要性の画像

④各ワークによって治具や芯だし方法が違う。また機内の構造が違うため機種やメーカーによってもプログラムは変わる。
AI自動NCプログラム作成ソフトや機械メーカーのAIソフトでは利用できる治具やチャック、機械が限られている。機械メーカーのAIソフトの方がより機械や治具・チャックデータなどの正確な情報も認識できるため自由度が高い。今後より進歩していく部分と思われる。

AI自動NCプログラム作成ソフトとCAMの必要性の違いの画像

⑤ 実際に加工してみて、加工精度や条件・負荷、干渉の有無などを確認、修正(デバック)する必要がある。
→機械メーカーのソフトやシミュレーションソフトでデジタル上でシミュレーションすることで解決。機械メーカーのAIソフトでは、シミュレーション後AIがプログラムを最適化するものもある。試作工数・コストを削減。

デジタルツイン、シミュレーションの必要性の画像

⑥連続加工している中で精度を測定、改善の必要があればプログラムも補正する必要がある。(工具磨耗なども含めて)
→機上測定や自動工具測定をして自動補正することで可能。※まだ完全にでているメーカーはないと思われる。

工具磨耗や熱意変異補正の自動化の画像

⑦引合(お客様からの加工請負依頼)時に、加工時間から受注可否を判断する必要がある。生産計画や製造指示書、見積書など事務手続きも行う必要がある。
→機械メーカーのシミュレーションソフト(一部)やAI自動NCプログラム作成ソフトで解決。

加工時間自動算出の必要性の画像

これらの観点を把握した上で、部分的なことも含めて自動化する方法・ツールを紹介します。

対話式プログラミングソフト

対話式プログラミングソフトとは、工作機械の操作盤上で「質問に答えるような形」で項目や数値を選択・入力することでNCプログラムを作成するソフトです。NCプログラミングの知識を必要とせず、短時間で簡単に、直感的に効率の良いプログラムを作成できます。ヤマザキマザックが約40年以上前に世界で初めて開発しました。

この対話式ソフトにより、NCプログラム作成時間を削減することができます。 課題の①②を解決。③④を簡素化。

メリット:選択式でNCプログラムを自動作成するため誰でも利用できる
デメリット:1つ1つ選択しなければならないため加工箇所が多いものなどは手間がかかる(CAMの方が早い)。曲面など3D CADが必要なような複雑形状はできない。

対話式CNC装置 MAZATROLの軌跡

CAD/CAM/CAE

CADとはComputer Aided Designの略で、コンピュータ上で設計を行うソフトウェアです。2次元の平面図を作成する2D CADと3次元の3D CADがあります。現代の設計ではほぼ全てCADが使われています。

CAMとはComputer Aided Manufacturingの略で、CADデータに基づいた加工プログラム(NCプログラム)を自動で作成するソフトウェアです。CAD機能にCAMが加わったソフトウェアも多くあります。CAMを用いることでNCプログラムを事務所のPCなどで作成することができ、NCプログラム作成の時間そのものも短縮できます。3D CADで作成するような自由曲面形状など、複雑な加工のNCプログラムを自動作成できます。用途によって様々な種類のCAMが存在します。
またCAMで作成したプログラムをシミュレーションするソフトウェアもあります。専門のものもCAMについているものもあります。コンピュータ上でプログラムをシミュレーションすることで干渉確認などを事前に行うことができます。

CAMでは①②を解決
シミュレーションができるCAMであれば⑤と場合によっては⑦も解決

CAEとはComputer Aided Engineeringの略で、コンピュータ上でシミュレーションすることにより、物理・流動解析を行うソフトウェアです。CAEにより、設計段階で試験を行い、実際にものを作った場合と比較して試作工数を減らすことができます。

 最近では、CAEで設計段階で詳細の解析を行うことにより、設計→試作品加工→試験→再設計…となる工数を削減して、デジタル上(コンピュータ・バーチャル上)で高速に行うことが求められています。さらに一つの部品の解析だけではなく、製造工程もデジタル上でシミュレーションして、生産ラインの立ち上げ工程を削減することも行われています。そのような工場をデジタル上で再現して先にシミュレーションすることで、開発期間・費用を削減することはデジタルツインと呼ばれています。工作機械メーカー(特に大手3社)は、特にこのデジタルツインに非常に力を入れています。

デジタルツインのイメージ
デジタルツインのイメージ

AI自動NCプログラミングソフト

 最近では、膨大な加工データを元にAIによりNCプログラムを自動生成するソフトウェアも出てきています。3D図面を入れ込むことでAIが加工箇所、加工条件、プログラム、工具情報などその他の条件も自動生成して、すぐ加工に移ることができます。
 このようなソフトは現段階では、課題③④⑤を解消するために、使用できる工作機械や工具、ワーク形状(治具形状)を絞っています。しかしAIはデータが増えるほど精度が上がり今後対応できる範囲も広がっていきます。現に2021年から市場に出始めて何度もアップデートされています。課題⑦の解消のため、見積も自動作成でき、管理しやすい画面や加工指示書にして出力できます。

ARUMCODE
多品種少量の部品加工を行っていたアルム社が開発したAIソフトです。3D CADデータを入れ込むだけで、形状解析、非削材の寸法設定、加工箇所の選定、工具選定、加工条件選定、効率の良い加工パス計算を自動で行います。立型の3軸マシニングセンタで、バイスクランプできるワークに限られますが、2022年12月現在で2.5次元の加工まで行えます。
 また実際の加工業者が開発しただけあり、現場で求められる自動化にこだわっている印象を持ちます。精密な加工精度の追求や、カメラユニットで工具を自動測定することで工具磨耗補正と工具データの更新を自動で行い(課題⑥を解決)、1台で多数のマシニングセンタと接続できます。また切削シミュレーションで干渉チェックも行うことができます(課題⑤を解決)。今後5軸加工もできるようアップデート予定があります。ARUMCODEでは、課題の①②③⑤(⑥)⑦を解決できます。④は機械や治工具に制約あり。

 可変型サプライチェーンシステム(状況に合わせた最適化ができる受発注、生産管理システムなど様々な最新アプリ群)と完全自動化されたTTMCと呼ばれるマシニングセンタユニット(ロボットと多品種対応ストッカー、ツーリング関係のシステム)を組み合わせた”スマートファクトリー構想MMOP(Massively Multiplayer Online Production)アルム(株)HPより引用” を掲げています。

このARUMCODEは2022CEATECH AWARDデジタル大臣賞など数々の賞も受賞しており、現在大注目のソフトウェアです。

アルム(株)は製造業をAIと自動化で変革する。切削加工等の自動積算・自動NCプログラミングのAIメーカー
アルム(株)は製造業をAIとロボット自動化で変革する。切削加工、NC旋盤加工、マシニング加工等の自動積算・自動NCプログラミングのAIメーカー、ロボットシステム等の自動化メーカー。

COMlogiQ
 5軸加工を中心とした多品種少量生産請負加工を行ってきたHILLTOP社のサービスです。HILTOP社は働き方改革などでも有名で、副社長が「ディズニー、NASAが認めた 遊ぶ鉄工所」という本も出版されています。COMlogiQは使用できる機械を4台に絞り、工具も指定することで、5軸加工のプログラムまで自動生成できるソフトウェアです。足りない部分を手で追加入力することも可能で、設置場所などによって設定を柔軟に変更することもできます。
 またサブスクリプション型にしており、初期導入コストを削減できます。COMlogiQでは、課題の①②③(⑤)⑦を解決できます。④は機械や治工具に制約あり。

COMlogiQ コムロジック | 部品加工工程の自動化システム | HILLTOP株式会社 ヒルトップ
AIを用いた自動加工プログラム作成システムと「HILLTOP SYSTEM」を連動させた、部品加工工程の自動化システムCOMlogiQ(コムロジック)のご紹介。

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工作機械メーカーのNC自動プログラミングソフト

工作機械メーカーの自動プログラミングソフトに関しても紹介します。工作機械メーカーのプログラミング自動化に関しては、ここに紹介するようにNCプログラム全てを自動で作成するのではなく、プログラミングが難しい特殊な加工(5軸加工やギア加工など)のプログラムを簡単に作成できるソフトもあります。
※注 ここで紹介しているものが全てではございません。

ヤマザキマザック 

この分野で最も進んでいる工作機械メーカーはヤマザキマザックだと思われます。デジタル段取りと称して、3D図を入れると自動でNCプログラムを作成します。ソリッドマザトロールではAIが加工順序やパターン選定、加工時間算出、見積、シミュレーション、加工分析まで自動で行います。そのためデジタル上で計算したプログラムを実加工するだけで生産ができます。またミスミの加工受発注プラットフォームであるmeviyと連携もしており、機械の空き状況によりmeviyの仕事を受けることができます。
複合加工機でのギア加工プログラムを簡易に作成できるソフトや、ビビりが出た場合に振動センサで検知して自動で加工条件を変更するスムースAi主軸など切削加工を細かくサポートするソフトウェアも充実しています。現在は旋盤系のみですが、今後マシニング系も可能になると思われます。

工作機械とNC装置どちらも自社で製作していて、全世界に販売実績も多いヤマザキマザックだからこそデジタルツインに非常に注力しています。
 それらを実現するヤマザキマザック製CNCマザトロールでは、課題の①②③⑤(⑥)⑦を解決できます。④は自社製、及び旋盤系に限られるなどまだ制約はあります。

中村留精密工業

複合加工用の旋盤を得意とする中村留精密もAIを利用したソフトウェアに力を入れています。3D Smart Pro AI(プログラム作成支援機能)では、「3D CADモデルから、「モデル形状」「加工パス」「加工工具」「加工条件」「加工工程順序」をAIが自動解析し、 素材から完成品まですべての工程のNCプログラムを作成します。」(中村留精密工業HP引用)
 さらにAIが加工工程を最適化して加工におけるアイドルタイムを短縮します。また背面主軸(第二主軸)への受け渡しの詳細設定や、フィレットがあるポケット形状や溝加工など複雑な加工のプログラムもできるため、熟練者でなくても複合加工のプログラムを作成できます
3D Smart Pro AIにより課題の①②③を解決できます。④も自社製設備では全て可。

 NT コリジョンガード機能によりプログラムをソフトウェア上で先読みして干渉チェックすることで、干渉がある場合は事前に自動停止します。手動運転、自動運転のどちらも可能です。チャック、ホルダ、工具の情報は機械に記録された情報を使います。課題⑤を解決⑥は他の機能で一部可。
 またエアバック機能という衝突した場合に衝突を検知して1/1000秒で後退することで衝突の衝撃を緩和する機能もあります。

ソフトウェア プログラム作成支援 | 中村留精密工業株式会社

キタムラ機械

マシニングセンタ、5軸加工機メーカーのキタムラ機械もプログラミングの自動化とシミュレーションが可能です。JIMTOF出展の最新5軸加工機では、自社製CNC制御装置により、3D図と(初期の)工具情報を入力することで自動でNCプログラムを作成します。神戸大学とソフトキューブと共同開発したようで、“3Dプリンタのように切削加工を行う”イメージで、3D図を元に加工箇所選定、ツーリング(工具情報)、加工パス、加工条件を自動算出します。金型部品や人工骨などの一品一様の複雑形状加工での利用を目的としています。デジタル上での切削シミュレーションもできます。

最終的には、切削後に機上測定を行い測定結果に基づいてNCプログラムの補正を自動で行う機能を開発しているようです。JIMTOF2022で説明員に聞いたところによると機上測定はできるが、自動補正まではまだできていないとのことでした。

 しかしそのため、課題の①②③⑤(⑥)を解決することができます。

牧野フライス

2021年のメカトロテックジャパンで発表したマシニングプロセッサにてNCプログラムを自動作成できます。3D図をNC装置で読み込むだけで、加工工程の検討、工具選定、加工条件の計算まで自動で行います。またNC装置上でシミュレーションをすることもできます。”設計モデルを理解する制御装置“というコンセプトで、CAD室→直接実加工に持ち込むことを目的としています。課題①②③⑤(⑥)を解決することができます。④は一部の機種に限られています。

設計モデルを理解する制御装置 マシニングプロセッサ

オークマ

 3代総合工作機械メーカーのオークマは、制御装置を刷新してJIMTOF2022で発表していました。加工の知能化(AI)や、デジタルツイン、脱炭素化を目的に開発されました。今回は少し趣旨が違うので紹介しませんが、切粉や切削条件、ビビり、工具磨耗などの現場で出る課題をAIを使って解決する機能が多数あります。そのオークマが最も力を入れているのはバーチャル上で高度な加工シミュレーションを行うデジタルツインだと感じました。自社の設備のため正確にモデリングされた仮想の機械でプログラムをシミュレーションすることで、詳細に干渉確認、加工時間の把握、プログラムの改善を行うことができます。治具、工具、素材も3Dデータとして登録することで簡単に段取り替えも行うことができます。
課題①⑤(⑥)⑦を解決できます。

新世代知能化CNC OSP suite【オークマ】

DMG 森精機

DMG森精機もデジタルツイン上でのシミュレーションに力を入れています。CAMで作成したプログラムをDMG 森精機製NC装置CELOSのソフトウェア上で再現することで、加工評価、干渉確認、加工時間の算出を行います。AIを使って加工条件を最適化する切削力最適化機能により、より最適化されたNCプログラムに自動で変更できます。

課題①②⑤(⑥)⑦を解決できます。

その他様々なメーカーが対話式プログラムや、5軸加工やギア加工などの複合加工のプログラムを誰でも簡単に作成できるツールを作成しています。キリがないので、今回は特に工具選定や加工条件・パスを自動選定するNCプログラム自動化ソフト、及びシミュレーションにより試作時間を削減するソフトを紹介しました。

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