新規開拓の営業をする手法の一つのテレアポ。時代遅れと言われることもあるかもしれませんが、こと製造業・技術者相手の営業方法としては最も効果があるものと思われます。アポなしで訪問することは相手の時間を急に奪うことになり信頼を失いかねません。
そのためテレアポの確率を上げることが新規開拓の確率を上げることに直結します。
よくテレアポは10件に1件アポが取れれば上出来と言われていることが多いです。しかし私はだいたい3~5件に1件は取れています。そこで今までに機械の営業として何百、何千とテレアポをしてきた経験を生かして、どのようにしたらアポイントが取れるかを具体的に紹介したいと思います。
製造業・技術者相手のテレアポで意識する大前提
まず認識すべき大前提はこの2点です。
・自分が相手にメリットを与えられることをわかりやすく伝えること ・時間も含めて相手に負担をかけないこと
当たり前と思われるかもしれませんが、とにかくテレアポをしなければならない!!と思い込んでいると、長々と自社の商品の説明をしたり、切られないように電話が長くなったりしてしまいます。BtoCの商品を直接個人に販売するのであれば、営業電話に対して不信感を持たれるかもしれませんが、BtoBの製造業の技術者向けの場合は、情報収集も仕事の内ですので自分の仕事を助けてくれる情報や人であればメリットを感じてくれます。
逆に長々話をすると忙しい中で突然来た電話をとるため非常にストレスになります。とにかく相手へのメリットをストレートに伝えること、負担を極力少なくすることを意識してテレアポをすることで成功率が上がります。
ではそのための具体的な方法・意識することを紹介します。
・ターゲットユーザー毎にキーワードの選定を行う。
・「テレアポの目的=アポイントを取ること」を意識して電話する。
・営業の電話であること、誰と話したいかをストレートに伝える。
・キーワードとアポを取りたいということをストレートに伝える。
それぞれ具体的に紹介します。
製造業・技術者相手のテレアポの確率を上げる具体的な方法・意識すること
準備:ターゲットユーザー毎にキーワードの選定を行う。
まずはターゲットをリストアップします。その時にテレアポが手当たり次第にならないよう最低3段階(A~Cのような)に優先順位をつけます。そうすることで、繋がらなかった時に再トライするかどうかを判断できます。
ターゲットの見つけ方はこちらの記事にまとめています。
そして各ユーザーごとに引っかかるキーワードを選定します。旬な技術やターゲットが求めていそうなことを考えます。このキーワードが興味を持ってもらえるかにおいて最も重要となります。
例えば、大きなくくりでは「ロボットを使った自動化」、「省人化」、「環境改善」、「ターゲットの取引先との取引実績」、「ターゲットの業界の最新情報」などになります。
それらをユーザー毎に具体的にするとより興味を引きやすくなります。
例えば、「多品種の基盤組立をロボットで自動化」、「AGVにて搬送する作業員を省人化」、「安価な保温シートで工場内室温を一定にするよう改善」、「建材、家具業界での多品種自動化事例」といったようなイメージです。
製造業の技術者は、自分の担当する技術に関して知りたいと思っている人も多いです。そのためキーワードが興味のあるものであれば時間をとって会ってくれる場合がほとんどです。だからこそ事前に調べてキーワードを予測することが最も重要となります。
取引先もキーワードになり得る 製造業の場合様々な企業と取引・繋がりがあり、1次下請け〜5次下請けぐらいまである場合もあります。それらの取引先に関する情報や、取引先との関係もあるため、ターゲット企業の親会社や主要顧客と取引がある場合はその実績もキーワードとなりえます。
※自社の製品が決まっている場合のキーワード
自社の製品など売り込まなければならない商品が決まっている場合は、相手へのメリットをキーワードにすることでより興味を持ってもらいやすくなります。
例えば、AIを使った画像処理ソフトを製造業に売り込みたい場合、多品種少量の組立工程の検査が多そうな家電関係向けでは「組立ラインでの人の感覚による検査を自動化できるソフト」(→人による判断を重視しており自動化ができてないことが多いため)、 自動車部品メーカー向けには「◯◯(自動車メーカー)で加工後の傷の検査工程でも使われている画像検査ソフト」(→自動車部品は自動車メーカーが採用しているかどうか、採用を許可するかが重要なため)などといった形でキーワードを選定します。
通話:「テレアポの目的=アポイントを取ること」を意識して電話する。
テレアポの目的はあくまでアポイントを取ること(訪問日を決めること)です。このことを忘れないように意識する必要があります。「電話で事前に情報を聞き出そう」、「(周りくどい言い方をして)Noと言えない雰囲気を作ろう」といった考え方はいっさい不要です。技術者はとにかく忙しいので、できる限り相手の時間を奪わないように、相手に考える負担を与えないようにアポイントを取ることだけを目的に電話すべきです。
通話:営業の電話であること、誰と話したいかをストレートに伝える。
新規テレアポの場合、代表電話にかけることが多く事務職の方が出る場合がほとんどです。その際できるだけ早くキーマンに繋いでもらうために「なぜ電話したか、誰と話したいか」という電話の目的をシンプルに明確に伝える必要があります。
例えば、 「工場設備の自動化の紹介させて頂きたく電話しました。生産技術の課長様は今お手すきでしょうか」といった形です。
この「キーマンに繋いでもらう」行為が最も重要となります。なぜなら、製造業相手のテレアポが取れない理由のほとんどが「キーマンに繋がらない」からです。いかにキーマンに繋げてもらうかを意識する必要があります。
そのための具体的な方法としては、上記準備にも記したこの3点になります。
「興味を持ってもらえそうなキーワードを明確に伝える」 「シンプルに誰に繋いで欲しいかを具体的に伝える」 「キーマンが繋がりやすい時間に電話する」
事務職の方に断られる場合も担当者の名前を聞くようにしましょう。教えてくれるところは少ないですが、名前がわかれば次回電話しやすくなります。
通話:キーワードとアポを取りたいということをストレートに伝える。
キーマンに繋いでもらっても、長々とこちらの話をしていては嫌われてしまいます。ましてや技術者は今作業をしている現場を離れて電話をとってくれることも多く、非常に迷惑になってしまいます。そのためキーマンとの通話でも”営業の電話でアポを取るために電話をしている“ことをストレートに伝えます。
また相手が日程を選択できるようにすると相手の考える負担を減らすことができます。
例えば、「◯◯(キーワード)の紹介をさせて頂きたく連絡致しました。つきましては一度何日の何曜日か、何日の何曜日かにお伺いさせて頂けないでしょうか。」といった形に伝えます。
「営業の電話と思われると切られるのではないか」と思ってしまいがちですが、周りくどい言い方をして電話の時間が長引く方が嫌われます。長く話しても結局断られることが多いので、営業電話に対する拒否反応があれば縁がなかったと思って次の電話をかける方が効率的と考えています。
営業と思われない電話テクを磨くよりは、キーワード=自社の扱っている製品がユーザーに与える価値を考える方が重要です。
その他の具体的なテクニック
時間:技術者は現場にも出るため、朝は忙しいことが多い。狙い目は昼前と夕方。社長の場合はほぼ外出しているか忙しいので朝一なら繋がることも。
事務の方がキーマンに繋いでくれない場合は、事務の方が帰られた後の17時過ぎなども狙い目。(迷惑にならない程度に)
話かた:ゆっくりはっきり大きく、早口にならないよう注意する。それらも全てはストレートに伝わるようにするため。当たり前だが相手が話している間は聞く。
クロージング:電話したこと自体が悪い雰囲気でなかったらとにかくアポに繋げるようおす。逆に反応が悪ければすぐに諦めて切る(相手の時間を取ってしまうため)。
キーワードを含めた実際の通話の事例
商品(ユーザーの課題)をキーワードにした場合
ロボットでの多品種少量生産の自動化をキーワードにした場合の例です。どの製造業にもある程度当てはまりそうなキーワードではありますが、よりその企業向けに数字や製品名を出すなどして、具体的なキーワードを伝えることで興味を持ってもらいやすくなります。
例えば、家電・電気製品メーカーに電話をする場合
私:◯◯株式会社の△△と申します。弊社は、ロボットなどを扱っている機械の商社です。多品種の家電製品のねじ締め・シーリングなど組立工程や検査工程を自動化するロボットシステムを紹介させて頂きたく、電話しました。 ☆良いパターン 担当者:はい・・・良いですけど… 私:もし宜しければ何日の午前10時~か何日の午後13時~に少しだけお時間頂けないでしょうか。 担当者:じゃあ何日でお願いします。 私:ありがとうございます。では何日の10時に○◯の△△がお伺いさせて頂きます。失礼致します。 ☆微妙な反応の場合 担当者:今特に困ってないです。特に購入予定もありません。 私:設備の機械はそう頻繁に購入されるものでもないことは承知しております。何日か何日に御社の近くにお伺いする予定なのですが、もし宜しければ、15分~30分ほどでも構いませんので他社での実績事例紹介や情報交換だけでもさせて頂けないでしょうか。 担当者:・・・別に良いですけど。 私:では何日の何時はいかがでしょうか。 担当者:わかりました。 ☆悪い反応の場合 担当者:購入するところも決まっていて忙しいので結構です。 私(一度だけ粘ってみる):突然のお電話失礼致しました。私もすぐにお取引きさせて頂こうとは思っておらず、もし宜しければ□□の他社事例だけでも紹介させて頂けないでしょうか。 担当者:わかりました。(→日時指定へ。) 忙しいので結構です。 私:わかりました。お時間ありがとうございました。
取引先などをキーワードにした場合
ユーザーの取引先(特に親会社や元請けメーカー)と取引があることをキーワードにする場合です。取引先や関係企業、同業界の情報は誰でも欲しいので、ユーザーにも興味を持ってもらいやすいキーワードになります。親会社等であれば無碍にできないといった場合もあります。
ただしいやらしい言い方にならないような工夫が必要です。
例えば、自動車部品製造メーカーに電話する場合
私:◯◯株式会社の△△と申します。弊社は自動車関係向け(会社名を出すかは場合によるが初めはあまり出さない方が無難)に設備や自動化システムを販売している機械の商社なのですが、御社にもテカリや汚れの見た目など人の感覚を自動化できる画像検査装置を紹介させて頂きたく電話しました。もし宜しければ一度お伺いして説明させて頂けないでしょうか。 ☆良いパターン 担当者:はい・・・良いですけど… 私:もし宜しければ何日の午前10時~か何日の午後13時~に少しだけお時間頂けないでしょうか。 担当者:じゃあ何日でお願いします。 私:ありがとうございます。では何日の10時に○◯の△△がお伺いさせて頂きます。失礼致します。 ☆微妙なパターン 担当者:はい・・・すでに取引あるとこがあるので別に結構です。 私:(あまり取引先名を推そうとはせずユーザーに与える具体的なメリットを伝える) メインの設備は普段からお取引されているところがあると思いますので、もし宜しければ最新の画像検査関係の事例紹介や情報提供だけでもさせていただければと思っております。 ・・・ 担当者:自動車向けとはどういったものですか? 私:(情報を出して良い範囲で)◯◯社や△△社に加工後の打跡検査、エンジン組立後の部品を確認する画像検査システムなどを導入しております。そのようなシステムのほか、御社で今作業者の目で検査されている工程の自動化を試作段階から検討することができます。 担当者:わかりました。それであれば少し聞いてみたいとは思います。 ・・・ ☆悪い反応の場合 担当者:購入するところも決まっていて忙しいので結構です。 私(一度だけ粘ってみる):突然のお電話失礼致しました。私もすぐにお取引きさせて頂こうとは思っておらず、もし宜しければ□□の他社事例だけでも紹介させて頂けないでしょうか。 担当者:わかりました。(→日時指定へ。) 忙しいので結構です。 私:わかりました。お時間ありがとうございました。
まとめ
以上、製造業の技術者に対するテレアポのコツを紹介しました。やはり何度も述べていますが、最も重要なことは、技術者も情報収集が仕事なため、相手にメリットを与えられることをわかりやすく伝えること、時間も含めて相手に負担をかけないことです。それらを意識してそのためにどのようにすれば良いかの具体的な方法を紹介しました。参考になれれば幸いです。