ダイカストマシン周辺機器の自動化とは。ロボット、トリミングや離型剤塗布、バリ取りなど周辺機器とメーカーを紹介

機械/メーカー解説
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アルミ部品、特に自動車部品のような複雑形状をしているアルミ部品の製造にはダイカストマシンが使用されています。昨今では自動車部品でもEV化、軽量化に伴い、アルミ部品が増加、複雑化、大型化していてダイカスト需要は増えています。今回はそのダイカストマシンに付帯する周辺機器のメーカーを紹介したいと思います。増産や大型化に伴い今まで行なっていなかった工程の自動化や生産性向上をご検討の方の参考になれれば幸いです。

自動車部品のダイカスト製品の画像
ダイカストマシンで製造される自動車部品

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ダイカストマシンとは

ダイカストとは金型に溶かした金属を注入、冷却して固める鋳造方法の一種です。精密な金型により複雑な形状で同じものを量産できます。一般的な金型鋳造や砂型鋳造よりも高精度で薄肉、複雑形状の鋳造ができることが特徴です。そのためアルミ製自動車部品や亜鉛マグネシウムの部品製造によく利用されています。

ダイカストマシンとは、金型を搭載してダイカストを行う機械のことで、主に金型を閉める型締機構、溶かした金属を注入する射出装置から構成されます。

ダイカストやダイカストマシンの構造に関しては下記イプロスの記事をご参照ください。

 ダイカストマシンの特徴は「金型を変えるだけでさまざまな形状の製品を生産できること」や「同じものを何個も生産できる量産性」です。その量産性を保つためには、溶かした金属を入れる注油や、成形後の製品を取り出す工程、さらには不要な部分を削ぎ落とす仕上げる工程などさまざまな周辺機器や前後工程が発生します。またダイカスト工場は、油によるミストや、高温の溶かした金属を扱っていることなどから過酷な製造環境となります。そのためダイカストは生産性向上、作業員の環境改善、安全管理の面からも自動化、機械化が求められています

ダイカストマシンの画像
ダイカストマシンの型締部

本記事では、それらの周辺機器や前後工程のメーカーを紹介したいと思います。

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ダイカスト周辺機器を製造しているおすすめロボットシステムインテグレーター4社

おすすめのダイカストの周辺機器メーカー、ロボットシステムインテグレーターを4社紹介します。ダイカストは、高温な溶融された金属を扱い、製品・設備が大きく特殊なため、通常の金属加工と少し異なりある程度専門知識や実績のあるメーカー・システムインテグレーターが存在します。またそれらのメーカーはダイカストだけでなく多関節ロボットを使用したさまざまな自動化も行なっているため、ダイカスト前後工程、周辺機器の自動化の場合は下記のような専門メーカーに依頼するとスムーズです。

豊電子工業(愛知県)
・ダイカスト周辺機器・自動化メーカーとしてはトップメーカー。
・会社規模が大きい。配電盤を製造している部署も含めますが、専用装置製造、システムインテグレーターとしては異例の480名を超える従業員。米、中国、タイ、メキシコなど海外6カ国に展開。
・メカ、電気とも自社で設計、製作ができ社員の7割は技術者ということもあり自社でシステムを完結。
・ダイカスト関係の実績も豊富で全工程に対応でき、IoTなど最先端技術にも取り組んでいる。

株式会社豊電子工業
ロボットシステムと配電制御からラインビルダーまで、世界へ挑戦する企業のモノづくりをトータルサポートする豊電子工業です。

三明機工(愛知県)
・ダイカストだけでなく幅広いロボットシステムインテグレーター
・協働ロボットやAMR(自動搬送ロボット)やAI、VRを利用したサービスを展開しており最先端技術に特に注力。今回はそのダイカストマシンに付帯する周辺機器のメーカーを紹介したいと思います。
・本記事で紹介するダイカスト周辺機器の実績も多数。
・バーチャルロボットセンターという3Dシミュレーションをバーチャル上で確認、体験できる施設も所有。

三明機工株式会社 | 産業用ロボット技術・システムインテグレーターで業界をリードする
システムインテグレーターで業界をリードする

ロボテック(埼玉県)
・ダイカスト周辺装置・自動化専門メーカー。
・専門メーカーだけあり、後述する振動でゲートカットを行う超振くんなどダイカストユーザーの課題を解決する独自の技術を多数開発。

ロボテック株式会社
ロボテック株式会社ホームページに、おいで戴き誠にありがとうございます。 ダイカスト周辺機器、ロボットシステムメーカとしてお客様に合わせ様々な周辺機器・ロボットシステムを展開しております。

ニチゾウテック(熊本)
・日立造船の関連会社。
・プラント関係の製造や構造物製造を行なっていますが、工作機械や自動化設備も製造。その中でも大手自動車メーカー向けにダイカスト周辺装置の実績が多数。
・大型設備の実績も多数。

自動化・省力化設備の設計・施工|株式会社ニチゾウテック
ニチゾウテックは、ファクトリーオートメーションや自動化・省力化設備の専用機などの構想設計から詳細設計・製作・据付・試運転まで行います。

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離型剤塗布スプレー(ロボット)

 離型剤とは、熱によって溶かした金属が金型に焼き付いてしまわないように分離する塗布剤です。水溶性と油性があります。また金型と製品の摩耗の低減や冷却効果もあります。スプレーを用いて作業者が金型にかけることもあれば、ロボットや自動塗布装置で自動化することもあります。
 塗布頻度は、毎回行う場合も、定期的に行う場合もさまざまです。近年ではパルス塗布装置など無駄な塗布をできるだけ無くして、環境や離型剤のランニングコストにも配慮する設備・機能が用いられています。
 作業者の工数削減、大型ダイカストマシンへ近寄ることや塗布剤を被ることへの危険作業の削減のために自動化が求められています。

メーカー
豊電子工業、三明機工、ロボテック、ニチゾウテック、ダイカストマシンメーカーのオプション、他。

取り出しロボット

ダイカスト後に開いた金型から製品を取り出すロボットです。高温で比較的大きなものも多く高い位置での作業になることや後工程との連携が必要なため、作業者ではなくロボットが行うことが一般的です
 製品を取り出した後、トリミング(後述)やバリ取りなどを行うパターンが多いです。ロボット本体だけでなく、ハンドや配線が高温に耐えられる機器である必要があります。ダイカスト周辺機器が得意なロボットシステムインテグレーターは、それらにも配慮してシステムを設計しています。

インサートロボット
 インサートとは、製品に嵌め込む部品(金属)を先に金型に入れて鋳造することで製品の中に部品を嵌め込む鋳造方法です。プラスチックの射出成形でも用いられます。取り出しロボットと同じロボットで、鋳造前にインサート部品を金型にはめ込むパターンもあります。

メーカー
豊電子工業、三明機工、ロボテック、ニチゾウテック、他ロボットシステムインテグレーター

ダイカスト製品を搬送するロボットの画像
ダイカスト製品を搬送するロボット

トリミング

 ダイカストはどうしてもいらない部分が多数発生してしまいます。下記Tech Noteの「ダイカストの鋳造法案設計:ダイカストの基礎知識6」の画像にある、溶かした金属が金型に注入されるルートで固まってしまうランナーや、押し込む部分にできるビスケット、製品の末端まで金属がいくように少し多めに流すオーバーフロー部などが不要な部分となります。
 ダイカスト後に、ゲート(セキ)部で切断したりパンチしたりしてそれらの固まった不要な部分を取り除く必要があります。その工程をトリミングと言います。トリミングには、ハサミでゲートを切断(セキ折り)、パンチでビスケットを叩いて落とす、金型を作ってプレスで取り除くという方法があります。

下記 Tech Note ダイカストの鋳造方案設計:ダイカストの基礎知識6より引用

トリミング方法

ロボテック社 超振くん

細かく振動を与えることで製品の一番弱い部分(ゲート)を分離させる方法です。下にベルトコンベアなどを用意して、ゲートカットした製品を落として次工程に搬送することもできます。

超振くん テスト風景

パンチで切断
ビスケット部やゲート部をパンチすることで落とす方法です。高速でパンチ装置の下にロボットを持っていき落とす方法やパンチ自体をロボットに持たせて落とす方法があります。ロボットで製品を持ったまま行うことで、取り出し→パンチ(トリミング)→次工程への搬送まで自動化できます。

メーカー
豊電子工業、ニチゾウテック

ノコ刃で切断
大型のダイカスト品になるとゲートも分厚くなるため、回転させたノコ刃を当てて切断する方法もあります。

下記動画のメーカー・コヤマは、鋳造メーカーとして自社開発した切断機・バリンダーを販売しています。ゲート切断やバリ取りに利用されています。

メーカー
コヤマ、三明機工

アルミ切断

トリミングプレス
製品形状の金型を製作して油圧プレスにて取り除く方法です。不要な部分を一度に正確に落とすことができ、比較的大きな製品でもトリミングができることが特徴です。反面、製品の種類ごとに金型が必要になるため、多品種対応では費用が嵩んでしまいます。

メーカー
ニチゾウテック、多様な油圧プレスメーカー

バリ取り

 ダイカストは精密に鋳造ができる方法ではありますが、ほぼ必ずバリが発生するためバリ取り工程は必須です。特に外周部分にはみ出てしまいます。しかしアルミの場合、鉄やステンレスに比べて切削しやすく加工負荷は小さいことや複雑形状なことから、自動化する場合はロボットでのバリ取りが最適です。

ロボットバリ取り

ロボットでのバリ取りシステムメーカーに関しては下記記事にまとめています。紹介しているどのメーカーも主にダイカスト品のバリ取り用途での実績が多いです。

メーカー
豊電子工業、三明機工、ロボテック、ニチゾウテック、下記記事に掲載メーカー

ロボット以外では、先述したコヤマがバリ取り機を製造しています。またマシニングセンタで行う方法があります。

コヤマ バリンダー|鋳鉄・アルミ合金鋳物のバリ取り仕上げ作業機
株式会社コヤマの”バリンダー”は、鋳物・アルミ合金鋳物仕上げ作業の改善に最適な鋳物バリ取り機です。据付面積が小さく、一作業員の多台数運転操作が可能です。

注湯

 ダイカストマシンにダイカストに使用する溶けた金属を注ぐ工程です。材料を溶解したものをダイカストマシンに注ぎます。ロボットで行う場合や、ダイカストマシンメーカーのオプションで機械付帯の注湯装置があったりします。

メーカー
ダイカストマシンメーカーのオプション、豊電子工業、三明機工、ロボテック、ニチゾウテック

ダイカストマシンについた注湯装置の画像
ダイカストマシンについた注湯装置

チラー

 ダイカストは、非常に高温の溶けた金属を流し込んで冷却して固めるため金型の温度管理も重要になります。金型の配管に温度管理された水を流し込み、冷却して温度を保つためチラーが使われます。

一般的な工業用チラーメーカーのチラーで行いますが、近年は省エネなタイプなどより環境に配慮されたチラーが求められています。

メーカー
チラーメーカー(オリオン機械やレイケンなど)

プラテン面の補修

 プラテンとはダイカストマシンの金型が取り付く面のことで、高圧な型締力を受けるため劣化してしまいます。プラテン面が劣化すると金型の平行度が落ちて不良品の原因となるため、プラテンの補修が必要です。肉盛溶接をして再度フライス加工や研磨加工により平行なプラテンにして、稼働側と固定側を合わせて調整する必要があります。職人技が必要になるため、プラテン補修を専門に行なっている業者があります。

メーカー
ハルノ
本田技研工業のダイカストマシンのプラテン補修業務を請け負っていた実績から多様なダイカストマシンの補修ができます。

プラテン補修事業 | (株)ハルノ

KDS産業
ダイカストマシンや工作機械の中古販売を行なっている業者です。オーバーホールやプラテン補修も行なっているようです。

ダイカストマシン・工作機械売却/買取 | KDK産業株式会社
日本全国、海外で中古ダイカストマシン・工作機械・周辺装置の買取/販売・輸出・小型ダイカストマシン製造販売・移設工事・修理など行なっております。

まとめ

 以上、ダイカスト周辺機器のおすすめメーカーと工程を紹介しました。ダイカスト関連の自動化をご検討の方の参考になれれば幸いです。

おすすめロボットシステムインテグレーター
豊電子工業、三明機工、ロボテック、ニチゾウテック

周辺工程
離型剤塗布スプレー:上記メーカー、ダイカストマシンメーカー
取り出しロボット:上記メーカー、他ロボットシステムインテグレーター
トリミング(振動式、パンチ式、プレス式):上記メーカー、コヤマ
バリ取り:上記メーカー、ロボットバリ取りメーカー、コヤマ
注湯:ダイカストマシンメーカー、上記メーカー
チラー:チラーメーカー
プラテン補修:ハルノ、KDS産業

なおロボットシステムインテグレータの選定は、取引がなければ内側が見えにくためわかりにくく難しいです。そんなインテグレーターの選定方法を下記記事でも紹介しています。

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