NC旋盤とは~種類やメリット、メーカーや汎用旋盤との違いを解説

機械/メーカー解説
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金属切削加工で最も使用されている機械の一つである旋盤。中でも量産加工、多品種少量加工のどちらでもよく使われているNC旋盤の種類を解説します。NC旋盤って何?NC旋盤ってどんな種類があるの?どんなメーカーがあるの?といったことを簡単に解説します。

この記事でわかること
・NC旋盤にはどのような種類があるか。
・各NC旋盤にはどのようなメリットがあるか。

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旋盤とは

 旋盤とはワーク(加工される製品)を回転させて、そこに刃物を当てて削る金属加工を行う機械です。そのため、ワークはシャフトや円盤、ギアなどの回転できるものが一般的で、りんごの皮剥きやろくろのようなイメージで加工を金属を加工します。
 大手旋盤メーカーの1社中村留精密工業(株)のHPに旋盤に関してのわかりやすい解説ページがありましたので参考いただければと思います。

旋盤とは? 加工対象から機械構成などを解説! | 中村留精密工業株式会社
「旋盤」という機械をご存知でしょうか?我々の日常生活で目にすることは少ないですが、身の回りのあらゆる製品を生み出す重要な役割を担っています。この記事では、旋盤の加工対象から機械構成などを解説します。

旋盤の中には大きく分けてNC旋盤汎用旋盤があります。
NC旋盤は、移動量や切削量等を数値で入力して制御します。また複数の工程や工具交換もプログラミングすることで自動で加工ができます。汎用旋盤はハンドルを回して移動させ、手動の感覚で加工するものです。工具の交換や切込量などの変化も手動で行います。現在では圧倒的にNC旋盤が使用されています。

NC旋盤は同じものを大量に加工する場合や、複数の工程で加工する必要がある場合に適しています。汎用旋盤は少しだけ削って部品形状を修正したりするなど、手直しや一品一様の部品を生産する場合に使用されます。

NCプログラムで制御されるNC旋盤の写真
NCプログラムで制御、自動運転するNC旋盤

手動の感覚で扱う汎用旋盤の写真
手動の感覚が重要な汎用旋盤

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NC旋盤での加工

主に円形、円筒形のものを回転させて加工します。シャフトや円盤、ギアなどの加工によく使用されています。

旋盤で加工されるワーク例の写真
旋盤で加工されるワーク例

加工内容
旋削 回転するワークにバイト(チップ)を当てて皮剥きのように加工すること。ワークの外径や内径を加工します。またワーク外周に溝を入れる加工も可能です。

ミスミ旋削用インサート CNMG120408FD-MC1063 切削加工動画
外径旋削の動画 (Youtube ミスミ公式チャンネル より引用)

穴あけ加工 回転するワークにドリルを当てて穴を開ける加工です。通常の旋盤では円形の真ん中にしか穴を開けることができませんが、複合旋盤ではワークを回転させずに保持して、ドリルを回転させて様々な箇所に穴を開けます。

ボーリング(中ぐり加工) 回転するワークの穴にボーリングバーと呼ばれるバーの外側にチップがついたものを当てて、穴を広げて寸法を出す加工法です。

ボーリング加工の写真
ボーリング加工のイメージ

フライス加工 平面を削る加工です。通常のNC旋盤では加工ができませんが、複合加工機では加工ができます。削る部分が大きいため加工の抵抗も大きく、負荷がかかります。

フライス加工の写真
フライス加工のイメージ

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旋盤の種類

 ではNC旋盤にはどのような種類やメーカーがあるのか、構造の違いをもとに説明したいと思います。

旋盤の各部の名称は下の図の通りです。

NC旋盤の各部の名称の写真
旋盤の各部の名称

旋盤の大きさを表す主な部分は下の図の通りです。
加工するワークの大きさ(径)や重量、形状によってチャック(主軸)サイズを選定、回転させた時の径で振り回しを選定、ワークの長さで芯間を選定します。

1スピンドル旋盤

 ワークをつかんで回転させるチャック(主軸/スピンドル)が1つの旋盤です。これが最も一般的なNC旋盤です。左側の主軸でワークを回転させ、刃物を当てて加工します。一般的にはタレットと呼ばれる部分に8〜12個ほど刃物を取り付けることができます。タレットを増やしてより多くの工具を搭載するタイプもあります。
 ミーリング(ドリルでワークに穴や溝を空ける)機能をつけて一度のチャッキングで穴あけ加工まで行うような場合も多いです。

メリット:シンプルな構造のため他の旋盤より安く省スペースで、剛性が高い場合が多い。
よく加工されるワーク:円形、円筒形状のもの様々。
メーカー:多数。ほとんどの旋盤メーカーがこの機種を持っており、チャックサイズで6インチ〜12インチがよく使用されています。

対抗2スピンドル旋盤

 ワークを回転させる主軸(スピンドル)が2つあり左右対抗についている旋盤になります。1工程目(表)を加工して、反対側の主軸がワークを取りに行くことで、1工程目で掴んでいた部分(裏)を2工程目で加工することができます。ただし右側のサブ主軸(2工程目)は少し小さい主軸の場合もあります。タレットが上下に2つあり、左右の主軸で同時加工ができるものもあります。

主軸同士の芯が正確出ているため、2工程目で右側の主軸が掴んでも芯がずれません。1スピンドルや次の平行2スピンドルでは、一度主軸からワークを取り外すことで芯がずれてしまいます。裏表で高い同芯度が求められるワークであれば、対抗2スピンドルが最適です。

※芯とは、ワークの軸の中心のこと。ワークを回転させて加工するため、軸の中心がブレると円形にならずに楕円やテーパーのついた形状になってしまう。旋盤では軸の中心を出すことが重要。

旋盤での芯の影響の写真
旋盤での芯の影響

※タレットを複数持ち、同時加工や様々な工具での加工を行うことができる機械もあります。そちらの加工例。

中村留・WT-150 2号機での加工
中井製作所名古屋 Youtubeチャンネル 引用

メリット裏表を1台で加工ができる。2工程目でも1工程目の芯がズレずに加工ができる。裏表を加工できるので旋盤を2台おくより省スペース。上下のタレットで同時に加工することで加工時間を短縮できる。

よく加工されるワーク:フランジ形状、ポンプ・バルブ関係
メーカー:多数。ほとんどのNC旋盤メーカーが製作。

複合加工機

 主軸自体は1スピンドルや対抗2スピンドル旋盤と同じく左右に搭載している形状ですが、刃物台が通常のタレットと違いATCで工具を自動交換できる機械になります。ATCとはオートツールチェンジャーの略で、マシニングセンタに搭載されている自動で工具を交換する主軸です。そのため通常の12個までしか刃物をつけられないタレットと違い、より多く、より特殊な形状の刃物の搭載が可能です。

通常のワークを回転させて外径を削る旋削加工だけでなく、様々なドリルやフライスカッターによるミーリング加工が可能です。そのため一度ワークを保持したら機械や保持方法を変えることなく、最終形状にまで1チャッキングで仕上げることができます。今まで旋盤で外径、内径加工、マシニングセンタで穴空け、フライス加工を行っていたことが1台に工程集約できます。工程集約だけでなく、人が行っていた段取り替の作業を省くことができるため生産性も向上します。

この工具主軸はタレットと違いB軸回転ができるため、旋盤で5軸加工が可能となります。単なる旋削、ミーリングだけでなく、様々な複合加工が可能です。左側の主軸で掴んで加工後、右側の背面主軸に持ち替えて加工することで全面加工が可能です。むしろ旋削は少なく、ほぼドリルで5軸のミーリング加工を行っていることもあります。

メリット:1チャッキングで全加工ができる。多品種・多工程の加工を自動化できる。旋盤で5軸加工ができる。

よく加工されるワーク:複雑形状部品、航空機部品、医療機器、スクリュー関係、ドライブシャフト、金型部品、精密機器、ハウジング系部品

主要メーカー:ヤマザキマザック、オークマ、DMG森精機、中村留精密工業
※自動盤は後術

加工例

ヤマザキマザック 複合加工機 INTEGREXの加工例
Youtube Yamazaki Mazak Corporationチャンネル引用

平行2スピンドル旋盤

 主軸が2つなのですが、どちらも正面を向いて平行についている旋盤になります。上部にローダーが搭載され、1工程目が終われば2工程目へ自動で搬送、ワークの裏表または別の加工を行います。先ほどの対抗2スピンドルと違う点は、同じサイズの主軸、タレットでの同時加工ができるため、サイクルタイム短縮になります。さらに1台のローダーで2台分の搬送を自動で行うため、省スペースとなります。主にギアやオイルポンプ部品等自動車部品、フランジ形状部品の量産ラインで使用されています。

メリット:2つ同時に加工ができるため加工速度が高い、省スペース。ローダーを繋げやすく自動化がしやすい。モジュール的に増設・工程変更ができる。旋盤を2台買うよりは安い。

よく加工されるワーク:トランスミッション用ギア、インプットシャフト、ステアリング部品、クラッチ関係、カバー関係、ブレーキ部品

主要メーカー:村田機械、高松機械工業、滝澤鉄工所、FUJI、タカハシキカイ、オークマ、DMG森精機、ヤマザキマザック

参考動画

TAKISAWA 更に高速・高精度になった平行2主軸CNC旋盤 TT-2100HG/HPG
Youtube 株式会社滝澤鉄工所チャンネル引用

自動旋盤

 NC旋盤の中でもワーク材料であるバー材(棒状の素材)を自動供給して長時間全自動で大量生産する旋盤になります。バーフィーダーと呼ばれるバー材を大量にストックして1本ずつ、定量ずつ供給する装置により、金太郎飴のように先端を加工、切断、次の加工分を突き出して先端を加工といった形になります。比較的小さいワーク(大きくてもφ40程)が多いです。刃物を取り付ける刃物台も通常のNC旋盤のようなタレット型ATC付主軸のようなタイプや、くしのように刃物が並んだくし刃型があります。くし刃型のメリットは工具交換時間が短いことです。

メリット:材料も半永久的に自動供給されるので完全自動化・24時間稼働が可能。材料を支えながら加工ができるため精密加工ができる。

よく加工されるワーク:精密部品、コネクタ、医療機器、油圧部品、ブレーキ部品、エンジン小物部品

主要メーカー:シチズンマシナリー、ツガミ、スター精密、DMG MORI

参考URL(URL内のチャックワーク形式は本記事では上記の旋盤のことです。)

早わかりCNC自動旋盤 : シチズンマシナリー株式会社
Cincom製品(主軸台移動型・主軸台固定型)をご紹介いたします。

立旋盤

 主軸が縦向きについた旋盤です。上を向いた主軸にワークを載せて回転させて加工します。横型と違いチャッキングしてもたわまないため、重量物の加工が可能です。横型の通常の旋盤に比べて機械も省スペースな場合もあります。ただし長いワークは加工できず、小さいワークを加工する際もプログラミングなどに手間がかかります。そのため一般的には横型の旋盤が使用されており、立旋盤の方が価格も高いです。B軸があり複合加工ができる機種もあります。

立て旋盤「株式会社オーエム製作所HPから引用」

メリット:重量物を加工できる。比較的省スペース。

よく加工されているワーク:重工製品、プラント部品、鉄道車輪、造船関係

主要メーカー:オーエム製作所、芝浦機械、オークマ、ヤマザキマザック、日精ホンママシナリー、滝澤鉄工所

汎用旋盤

 CNCで数値制御されるのではなく、手でハンドルを回して加工する旋盤です。NC旋盤が発明される前は、全てこの汎用旋盤で加工されていました。プログラムが要らず、感覚で加工ができるため今でも職人さんは汎用の方が使いやすいという方もおられます。感覚で加工するため、技術さえあれば思い描いた形に加工ができます。どのような工場でも1台あればちょっとした加工に使えるため便利です。日本の汎用旋盤は本当に技術・剛性が高く40年、50年と使用されているものもあります。中古市場でも20年、30年使われた機械がいまだに売買されています。

日本メーカーが製造を辞めていく中、サイダ・UMSは鋳物から機械加工まで全て国産で、デザインにもこだわった汎用旋盤を製造されています。

普通旋盤 VERSEC-neo | 株式会社サイダ・UMS
【純国産】鋳物から機械加工、組み立てに至るまで全ての工程を日本国内で製造。スタンドやベッドなどの大物鋳物は静岡県で生産。キサゲでの高精度なすり合わせを含むすべての組み立て工程を社内で一貫生産。 【従来の普通旋盤よりもより汎用的に】作業者の意のままに、直感的な操作が可能な普通旋盤。無段階変速の主軸、主軸とは独立して駆動…

メリット:ちょっとした加工に便利。プログラムがいらないため一品一様の製品加工に便利。

よく加工されるワーク:部品修正など。組立部品。

主要メーカー:サイダ・UMS、池貝、DMG森精機

半NC旋盤(半自動旋盤)

 呼び方があっているかわかりませんが、上記汎用旋盤の便利さを残しつつ、簡単な加工であれば対話式プログラムで設定して自動加工できる旋盤です。半自動旋盤や半NC旋盤と呼ばれます。「決まった加工が複数回あるが、汎用的にも使えるようにしたい」、「全てのワークでNCプログラムを作成することがめんどくさい」といった場合に便利です。大型の旋盤になるとNC旋盤とうたっていてもこの半NC旋盤の場合も多いです。

半自動旋盤、半NC旋盤の写真
半自動旋盤のイメージ ハンドルも操作盤も付いている。

メリット:汎用的に使用できる他、簡単な加工をプログラムで設定・記録できる。

よく加工されるワーク:簡単な加工で少し生産数が出るワーク、シリンダーなど。

主要メーカー:滝沢鐵工所、大日製作所、DMG森精機、下記大型旋盤メーカー

大型旋盤

 汎用旋盤、半NC旋盤の大型盤のようなイメージです。巨大なシャフト形状のものなどが加工されます。ベッドは数m〜十数mあり、移動する刃物台ですら分割された旋盤です。研削までできる機種もあります。

メリット:大型の製品が加工できる。
よく加工されるワーク:タービンローターシャフト、船舶用シャフト。
主要メーカー:唐津鐵工所、大日製作所、池貝

正面旋盤

長さはないが径は大きい円盤形状のワークを加工するようの旋盤です。チャックが大きく芯間は短い構造をしています。汎用旋盤式のものと半NC式のものがあります。プラント設備用バルブなどの加工に使われます。

メリット:省スペースで径の大きいワークの加工ができる。
よく加工されるワーク:バブル部品、大型フランジ部品
主要メーカー:西部ハイテック

正面旋盤のイメージの写真
正面旋盤イメージ

特殊加工機

 旋盤をベースにした特殊な加工ができる機械もあります。例えば、レーザー焼入溶接溶着金属積層が同じ機械でできる機械等です。様々な工程を1台にまとめることで、工程集約が可能となります。また、マシニングベースの5軸加工機のテーブルを回転させて、旋削を行う工程集約も可能です。

メリット:工程集約ができる。レーザー加工や溶着の後、そのまま切削で仕上ができる。

よく加工されるワーク:異種金属の接合があるワーク、医療機器、航空機部品、複雑な機構部品

主要メーカー:DMG森精機、オークマ、ヤマザキマザック、高松機械

精密レーザー焼入れ/超複合加工機 MULTUS U3000 LASER EX【オークマ】
Youtube OKUMAOFFICIALチャンネル引用

モジュール型

 各主軸をそれぞれモジュール化(主軸と工具主軸・工具マガジンのセット)して、それをベッドに組合せる形の機械です。モジュール自体が幅が狭いので、省スペース化にもなり、旋盤だけじゃなく穴あけや洗浄、計測、ホブ加工もでき工程集約になります。製品に合わせて設備レイアウトを変更しやすいことも特徴です。

メリット:様々な工程を省スペースで集約できる。レイアウト変更が容易。

よく加工されるワーク:ギアなどの量産で品種が複数ある自動車部品

主要メーカー:FUJI、高松機械工業

参考URL

株式会社FUJI
モジュール型生産設備 DLFn 電子部品実装機(自動装着機/組立機)、工作機械の開発・製造・販売。お客様のニーズにお応えできる製品・技術・サービスを提供します。

NC旋盤にはこのような種類があります。購入する際は、それぞれの目的にあった設備・メーカー選定が必要です。今後はより深くそれぞれの種類でどのような加工ができるのかなどをまとめていきたいと思います。

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