こんにちは。バリ取りの自動化。今回はそれらを実現する工具(刃物)を紹介します。ロボットやバリ取り機、マシニングセンタや旋盤などを使用することで様々な工程でバリ取りの自動化は可能ですが、実際バリをとる工具の選定が非常に重要です。ワークやバリの形状、材質、要求品質、工具寿命などによって最適な工具が変わってきます。今回はそれらの選定のため、どのような工具があるか、どのようなバリやワークに向いているかを紹介したいと思います。
バリ取りにおけるツールの役割
バリ取りの自動化と一言で言ってもさまざまです。マシニングセンタや旋盤(回転工具仕様)であれば、刃物を回転させる機構がついているので、刃物だけ用意できれば自動化できます。
ロボットでバリ取りを自動化する場合には、刃物を回転させるスピンドルモータや、工具を保持して習い加工を実現するフローティングユニットなどが必要となります。ロボットでのバリ取り自動化に関しては、下記記事で紹介しています。
また面取りとバリ取りの違いやギアのバリ取り自動化に関しては下記記事で紹介しています。
面取りカッター
バリ取りではなく面取りを行うためのツールです。刃の部分が下向きの膨らんだ円錐形状でワークに倣(なら)って当てた部分を面取りします。ロボットやマシニングセンタでフローティング機構をつけて面取りを行う際によく利用されます。上下左右の加工範囲が大きく、押し当てても一定の加工ができることが特長です。穴の表面側の面取り用の面取りカッターもあります。刃の面の一部に切粉逃しようの穴が空いているものもあります。
インサートチップ(取り替えしきの刃先)を取り付けて加工するカッターもあります。多数の刃をつけたカッターを回転させて面取りを行うことで、より強力で広範囲の面取りが可能となります。
メリット
・バリ取りだけでなく面取りができる。
・面取りカッター自体に角度がついているので、当てるだけで面取りができる。
・円錐形状のため倣いやすい。
デメリット
・バリだけを除去することはできない(面取りしてしまう)。
・先端の刃の部分が膨らんでいるため、穴の面取りはカッターより大きな穴しか加工できない。
向いているワーク・バリ
・外周の面取りを行いたいワーク。
・ロボットで自動化するなどフローティングユニットに搭載させて面取りをするワーク
富士元工業
インサートチップをはめるタイプを含めて多様な面取りカッターをラインナップ。C面取り、R面取り用などもあります。
新潟精機
金物のまち新潟県三条市の測定機器メーカーです。
切れ味や耐久性がある面取り工具を製作しています。
モノタロウ
穴の面取りカッターを多数ラインナップ。ネット通販企業ですので、工具をすぐに欲しいときにすぐ発注ができる。
スクレーパ
“スクレーパ”とは擦るもの、剥がすものという意味です。スクレーパ式の工具は引っ掻くような形でワークの外周のバリを取ります。外周や大きな円周などの加工に使われます。先端がナイフのように尖った刃物で削ぎ落とすようにワークを削ります。内径に刃を入れて一周させて削る内径スクレーパもあります。スクレーパ式の工具は主に手作業で使われています。
メリット
・引っ掻くように取るので、取れた粉が比較的大きなサイズになる。(粉が出にくい)
・加工時間が短い。
デメリット
・刃を当てなければならないため、ワークに当たって引っ掻いていなければ削れない。そのためロボットで自動化する場合には、広範囲を当てることができるブラシと比較して、ワークに当たらずにバリを削り残す可能性が高くなります。
向いているワーク・バリ
・パイプなど外周をぐるっとバリ取りする必要があるワーク。
・金型やブロックなど直線の多いワーク。
おすすめメーカーノガ・ジャパン
手作業で使われる工具も多いですが、多様な種類のスクレーパ式工具のラインアップがあります。
ブラシ
回転させたブラシを当てることでバリを取ります。樹脂製のブラシや金属製、砥粒を混ぜたものなど様々な種類があります。また形状も真っ直ぐ生えたブラシやカップ型のブラシ、横向きに刃がついているホイール型のブラシなどワークや用途に合わせて選定します。
メリット
・より広範囲に当てられるため、加工時間を短縮でき、取り残しも少ない。
・ブラシ材質を変えることでさまざまなワークで使用できる。特に樹脂製や柔らかい材質のブラシであればカッターやドリルと比較してワークを削らないため、バリのみを除去できます。
・砥粒やセラミックなどをブラシに入れることでブラシ自体の切削力・研削力を上げることもできる。
デメリット
・粉塵が発生する。(集塵機などが必要なことが多い)
・磨耗する速度は刃物より早い。
・特に砥粒を含んだブラシでは、傷がつく。(バリだけに当てることはほぼ不可能なため、ワーク自体にもブラシが当たってしまい、擦り傷がつく)
向いているバリ・ワーク
・広範囲を一度にバリ取りしたいワーク
・バリだけを除去したいワーク
ジーベックテクノロジー
マシニングセンタやロボットにつけるバリ取り用ブラシのトップメーカーです。金属、樹脂加工を行っている人であればよく聞くメーカーではないかと思います。独自のセラミックファイバー入りのブラシで切削力と耐久力が高いことが特長です。様々な形状のブラシやブラシ以外のバリ取り・面取りツールをラインナップしており、量産ラインでの様々なワークへの実績やノウハウが豊富です。
☆ブラシによるワーク全体のバリ取り機
マシニングセンタやロボットのスピンドルに持たせて使うブラシの他に、ワーク全体に当てるようなブラシを使ったバリ取りの専用機が用いられることもあります。外向きに刃がついたブラシの中心に回転軸を通して回転させて、ワークを当てます。
シャフト形状のワークなど、ワークの全周や全体的に効率よくバリ取りをしたい場合によく利用されます。ワーク全体に当てるため、研削力があるブラシではワークに引っ掻き傷のような傷がつきます。
バーテック
こちらはバリ取り機メーカーではなく、工業用ブラシの総合メーカーです。下記HPにブラシでのバリ取り機やバリ取りのイメージが記載されています。
穴のバリ、公差穴バリ用ツール
金属加工をしている上で最も悩むことの一つが交差穴のバリ取りではないでしょうか。交差穴とはその名の通り穴が別の角度から交わった穴ですが、後から穴を開け切った方向にバリが出ます。ワークの内部のため工具が届かないことが多く、それらを取るのは至難の技です。それを実現するために開発されたのが、交差穴用ツールです。穴の中で入れる時は刃物が引っ込んだ状態で差し込み、抜くときに刃物がでて、穴を開けた方向にでているバリをとるようなツールが多いです。
メリット
・カッターやブラシなどの通常のツールを当てにくい交差穴のバリを取ることができる。
・マシニングセンタにも取り付けることができる。
・ツールによっては穴の表側と裏側のどちらもバリ取りができる。
デメリット
・穴のサイズやバリによって様々なため選定が必要。
向いているバリ・ワーク
・エンジン部品、油圧機器部品など交差穴が多数あるワーク。
ジーベックテクノロジー 「裏バリカッター&カッター」
穴に差し込み、回転させたカッターを当てて裏面のバリを取ります。
オーダーメイドのバリ取り専用のプログラムも作成してくれるのでプログラミングが不要。
極東マシンツール「バーオフツール」
大量生産向きののバリ取りツール。穴に差し込むことで刃が開いて加工する。
表面と裏面をワンパスで加工ができる。
藤居製作所
小径穴のバリを内部から取ることができます。
パル
交差穴や楕円穴の裏に出るバリをとるツールです。
交差穴の角度が30度のものまで加工が可能。
砥石
バー材の先につけた砥石を当ててバリを取ることもできます。刃物を当てても取れないような硬い材質のものや弾かれてビビッてしまうようなバリを取ることができます。バリ形状が細かく微細なバリ取りに使用されます。砥石は連続で使用していくと砥粒が目詰まりして削れにくくなります。そのため目詰まりを治すドレス作業をしなければなりません。それらも対処しなければなりません。
メリット
・硬い材質やドリルなどではビビってしまう材質のバリを取れる。
・細かな加工ができるので仕上げ加工としても利用できる。
デメリット
・連続して加工する場合ドレスが必要。ドレス作業をするための砥石を削るドレッサーを用意する必要がある。マシニングセンタやロボットのバリ取りシステムで搭載することは難しい。
・非常に細かな粉が発生するので機械を痛めたり、作業者に粉塵被害が出る可能性がある。
向いているバリ・ワーク
・刃物だと弾いたり、ビビってしまうようなワーク
ジーベックテクノロジー セラミック砥石
一般的な砥石と違い砥粒ではなく、セラミックを含んだ工具。そのため折れたり欠けたりしない。ドレスでの成形(任意の形状にすること)が可能。
ダイテックジャパン ゴム砥石
ゴムでできた砥石です。そのためゴムの弾力性がありワーク形状に馴染みながら加工ができます。砥石よりもソフトな研削加工ができるためワークを傷つけたくない場合などに向いています。尖ったバリや粗い面には不向きです。通常の砥石と違い、削りながら自身も磨くためドレスする必要がないこともメリットです。
超硬ロータリーバー
先端が細かい刃の形状をした超硬のバーです。手動工具やスピンドルモーターに持たせて回転させて削ります。超硬材質でできているため、ステンレスなどの削りにくい材質なども削れることが特長です。シングルカット、ダブルカットなど刃の数や方向の種類があり、仕上がりの粗さや削れ具合が違います。
メリット
・ステンレスなどの削りにくい材質も削ることができる。
デメリット
・超硬のため靭性が少ない。
ムラキ
・多数のラインナップ。特殊形状にも対応可能。
エンドミル
マシニングセンタでよく利用されるエンドミルもバリ取りに使用することもできます。砥石と同じく、ワークを削り取ってしまうので、基本的にバリだけでなくワーク自体も削ってしまいます。そのため絶対に削れてはいけないワークには使用できません。さらに削った後には二次バリができることも欠点です。そのためバリ取りツールで削れないような大きなバリを取るためのあら加工などに使用されます。
ユニット(フローティングユニット、ホルダ、スピンドルモーター)
ロボットでバリ取りの自動化を行う際には欠かせないユニットのメーカーを紹介します。エアやスプリングが内臓されていて、刃物がワークに当たっても少し逃げることで削りすぎず、削り残しをないようにできるフローティングユニットや、ロボットでも先端のツールを回転させるスピンドルモーターなどがあります。ロボットバリ取り機に関しては上記にて紹介した記事に詳しく記載しています。
スギノ(バリカン)
ロボット用とマシニング用をラインナップ。細身のため干渉しにくいことやワンタッチでツールを交換できることが特長。
中西スピンドル
小型スピンドルモーターメーカー。歯医者さんで使う器具も製造している。コンパクトで高速回転が可能なモーターを多数ラインナップ。
バリ取りでの事例動画集
以上、バリ取りを自動化するための工具に関して紹介しました。